NECは12月25日、同日開催された取締役会において2016年4月1日付けの役員人事を発表し、記者会見を開いた。現在、社長を務める遠藤信博氏は会長、副社長を務める新野隆氏は社長に就任し、取締役会長を務める矢野薫氏は取締役となる。

左から、現社長の遠藤信博氏、新社長に就任する新野隆氏

新野氏は、福岡県出身の1954年9月8日生まれ。1977年3月に京都大学工学部を卒業した後、同年4月に同社に入社。2008年に執行役員に就任した後、取締役 執行役員常務、CSO、CIO、代表取締役 執行役員副社長を歴任、このたび、代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの就任が決まった。

来年4月に会長に就任する遠藤信博氏

会見の冒頭に遠藤社長は「2010年4月に社長に就任し、6年間に2回の中期経営計画を担ってきた。就任時点、NECグループの経営の課題は多々あった。最初の中期経営計画で半導体、PC、携帯電話の方向性を示したほか、市場に対する意識を強める目的でマーケティングオリエンテッド(販売戦略思考)な組織への変革などを実施し、スピーディーかつ正確に情報が伝達され、事業推進ができるように努めた。これらの取り組みにより、スムーズで安定感のある事業運営の事業基盤が構築されたのではないかと考えている。2回目の中期経営計画ではコンピューティングパワー、ネットワークの構築力、ソリューションを生み出すソフトウェアパワーをベースに社会インフラに注力している。また、日本国内のグローバル化を踏まえ、われわれの事業もグローバル競争力の強化が必要ということでシンガポールにグローバルセーフティ事業部を設置したほか、財務基盤の強化も実施している」と在任期間中を振り返った。

事業を推進した結果として「認証技術による安心・安全ソリューション、セキュリティソリューション、SDN(Software Defined Network)、ビッグデータソリューションは海外でも認知され、ビジネスの展開が可能になった。従来は通信機を中心としたビジネスアクティビティしかなかったが、ソリューションビジネスの展開を図ることができた。これらの事業改善や基盤構築は、われわれのトップマネジメントが力を集結して築いたものであり、次世代に引き継いでほしい。私自身はまだやり残した感はあるが、確実かつスムーズに経営方針を継続していくことやトップ自ら行動として示していくことが重要なため引継ぎをする」と同氏は述べた。

新社長となる新野氏については「私の右腕として各種の難題に対して方針を示し、判断・実行してきた。NECマネジメントパートナーの設立やスタッフの強化、効率化においてリーダーシップを発揮しており、次期中期経営計画で大きなリーダーの柱として役割を果たしてくれると信じている」と表し、遠藤氏は期待を寄せた。

新社長に就任する新野隆氏

続いて登壇した新野氏は「私は1977年に入社し、約30年間はITのソリューション営業を担ってきた。遠藤氏が社長に就任した2010年に取締役執行役員常務、2012年に代表取締役執行役員副社長に就いた。経営陣に加わった当初はITやネットワークなど、さまざまな部門があり、力を結集しきれていないと感じた。しかし、現在は社会ソリューション事業に注力する方針を示しており、社会に対してどのように貢献できるのかということが大事だ。私がやることは明確で、2点ある。1つ目は策定中の次期中期経営計画を実行し、さまざまな領域とソリューションを絞り込み、次の柱の事業を作り、全社の業務改革を推進していくことだ。2つ目はNECグループの文化の継承と創造だ」と語った。

遠藤社長が就任した2010年度の同社の売上高は3兆1154億円、営業利益は578億円の実績で、2015年度の見通しは3兆1000億円、営業利益は1350億円を見込んでいる。売上高は減少しているものの、営業利益は就任当初と比較して倍増しており、今後の同社のさらなる成長は新野氏にかかっている。