2016年1月15日スタートのTBS系ドラマ『わたしを離さないで』(毎週金曜22:00~22:54、初回15分拡大)で主演を務める女優の綾瀬はるかがこのほど、原作者カズオ・イシグロ氏とイギリス・ロンドンにて対談を行った。

対談を行った主演の綾瀬はるか(左)と原作者カズオ・イシグロ氏

英国で100万部を超える大ヒットとなったイシグロ氏の同名小説の初ドラマ化となる本作は、世間から隔離された施設・陽光学苑で良質な教育を与えられ育てられ、"普通の子供"であったはずの恭子(綾瀬はるか)、友彦(三浦春馬)、美和(水川あさみ)がある日、生まれながらに使命を与えられた"特別な子供"であると教えられ、本当の運命を知らされるストーリー。生まれてきた意味・生きる意味を問いかける同ドラマを演じるにあたり、主演の綾瀬が「この作品を、この役を、より深いレベルで理解したい」と考えていることを知ったプロデューサーが、イシグロ氏に連絡したところ、「ぜひロンドンへいらっしゃい。会って話をしましょう」と返事をもらい、対談が実現することとなった。

そして、イシグロ氏が来日した際に、一度ごく短時間あいさつを交わしている2人が、ロンドンにて再会。「聞きたいことがたくさんある」という綾瀬は、『わたしを離さないで』を生み出した成り立ちやキャラクターの作り方などを次々と質問し、「キャシー(ドラマでは恭子)のキャラクターについてイシグロ先生はどう思っていらっしゃるのですか?」と聞くと、イシグロ氏は「映像作品は(脚本の)森下さんやはるかさんのそれぞれの解釈が合わさってコラボレーションで作ることがエキサイティングなところ」としながらも、「キャシーは現実の人物に近いんじゃないかな」と語った。

また、綾瀬がこの作品の持つメッセージ性について質問をすると、執筆過程の秘話を明かした上で、「人生は短いということを書きたかった。すべての人は死を迎える。その短い人生の中で避けられない死に直面したときに何が重要なのか、そういうテーマについて書きたいと思った」と説明。一方、すでにドラマの脚本を読んだというイシグロ氏は、「森下さんが原作の中から新しい部分を探し出して、まるで、そこにあった開けていなかった新しいドアを開けて、何かを探してくれているようだ。それぞれの役に、役者さんが自分の解釈を加えて新しいものにしていく、というプロセスが映像作品の面白さ」と期待感を伝えた。

さらに、綾瀬が出演した『JIN-仁―』(同局)のVTRを取り寄せて見たというイシグロ氏は、綾瀬の演技力を絶賛。「時代設定という制限のある中で、医師に対する言葉にならない愛情を表情やボディランゲージでうまく伝えてらっしゃったところは綾瀬さんの演技力の素晴らしさだと思った」とたたえ、綾瀬が「Thank you very much」と照れた表情を浮かべる場面もあった。

予定時間を大幅に超え、4時間にも及んだ対談後、綾瀬は「充実したお話ができて、来てよかったです。『自分が思うようにやってください』とイシグロ先生がおっしゃってくださったので、自分が思う恭子という役を素直に演じられたらと思います」と手ごたえを感じた様子で、「ロンドンは初めてだったのですが、街並みや公園もとても落ち着いていて、すごく好きな街です。また来たいと思いました」と初めて訪れたロンドンの感想も語った。

綾瀬とイシグロ氏の対談は、1月8日発売の月刊『文藝春秋』(2月号)に掲載されるほか、ドラマのメイキング番組内で放送される。

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