自動家計簿・資産管理サービスや、ビジネス向けクラウドサービスなど、お金に関するプラットフォームを開発・提供しているマネーフォワードは、11月22日に品川インターシティホールで「Money Forward お金のEXPO2015」を開催した。1500人分のチケットは完売となり、世の中の「お金」に対する関心の高さを示していると言えるだろう。

「銀行、証券、保険、ライフプランニングなど、暮らしに不可欠なお金に関する課題をすべて解決する1日」として設定された本イベントでは、各分野のスペシャリストたちによるさまざまな講演が行われた。その中に、2001年に小泉内閣の経済財政政策担当大臣に就任、その後金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣などを歴任した竹中平蔵氏が登壇。竹中氏からは、「誰も知らなかった『お金』と『日本の未来』の見据え方」と題した講演が行われた。本稿では、その講演内容をお届けしよう。

世界の偉人たちが捉える「お金」の価値

「お金について議論したり、学んだりする機会が日本は少ない。今日は自分のために、これからの人生や日本、経済について考えをめぐらす時間にしてもらいたい」と、竹中氏は話を始めた。

慶應義塾大学 総合政策学部教授/グローバルセキュリティ研究所所長 竹中平蔵氏

小泉元総理がスピーチをする際に、原稿作成を行っていたという竹中氏。その際、世界の偉人たちの名言を参考にすることが多かったという。「名言集を読んでいて、おもしろいことがわかった」と竹中氏は言う。

「経済や法律、政治に関する名言はそこまで多くない。圧倒的に多い名言は男女の問題。そして、その次がお金について。例えば、イタリアのベルルスコーニ元首相は『なぜ私が女性にモテたのか、それは金を持っていたからだ』という言葉を残している。ドストエフスキーは『金、金とは鋳造された自由』と表現している。お金というものは圧倒的な存在感を持っている。お金がなくても幸せな人はいるが、お金があることによっていろいろなことができるようになる。人生の中で、お金と正面から向き合うことは重要なことである。アインシュタインは『宇宙で一番力の強い論理は金利の複利計算だ』と述べている」(竹中氏)

金利の複利計算とはどういうことか? 例えば、資産を年7%の利回りで運用していったとすると、10年で資産は元の2倍になるということになる。

「私たちは、1%でも所得を増やし、資産を1%でも高い利回りで運用することに対して、もっと真剣に考えなければならない。資産を金利で儲けるのは怠け者のすることだと、批判されることがあるが、日本はこれまでのように額に汗して働くのでは、発展途上国に勝てない状況になっている。これからは、額ではなく、脳に汗する仕事が大事になってくる。所得には、労働所得と資産所得の2通りがある。日本には1500兆円の資産があるはずなのに、それをうまく生かせていない。まず、労働所得で資産を貯め、それを運用して1%でも利回りを高くするよう考えなければいけない」(竹中氏)

竹中氏によると、GDPに占める資産所得の割合は、アメリカは2割なのに対し、日本はアメリカの10分の1以下だという。その理由は「低金利だということ以上に、株式や投資信託を避け、銀行預金による資産運用だったからだ」と竹中氏は述べる。

「2020年までにがんばれる基礎をつくれるかどうかで、その先の日本の未来が大きく変わるだろう。2020年までの5年間は、日本にとって非常に貴重なチャンスの時期。貪欲に考える期間にしてもらいたい」(竹中氏)