名古屋大学は12月8日、肺がんにおいてはCERS6というタンパク質が高発現し、それががん転移に必須の役割を果たしていることを発見したと発表した。

同成果は、同大学大学院 医学系研究科 分子腫瘍学分野 鈴木元 講師、高橋隆 教授らの研究グループによるもので、12月7日付けの米科学誌「Journal of Clinical Investigation」に掲載された。

CERS6はセラミド合成酵素の一種。肺がんにおいて過剰発現したCERS6は、C16セラミドと呼ばれる生理活性脂質を合成し、これが細胞内のプロテインキナーゼζ・RAC1複合体を活性化する。これにより、細胞表面にラメリポディアと呼ばれる細胞の遊走に必須となる形態形成が起こり、がん細胞が転移することが今回明らかになった。

C16セラミドは、今回発見されたがん転移促進を推進する一方で、アポトーシスと呼ばれる細胞死を誘発する物質として知られている。このため、同研究グループは、CERS6を分子標的として利用。C16セラミドの代謝上流物質であるL-α-DMPCを投与したところ、CERS6依存的にC16セラミドに代謝され、細胞死を誘導できた。細胞死はさらにC16セラミドの下流への代謝を抑制する低分子化合物D-PDMPにより増強された。なお、C16セラミド発現の低い正常細胞に細胞死は誘導されなかった。

この結果は、CERS6を分子標的とする新たな治療法が可能であることを示すものであり、その実現は極めて予後の悪い肺がんの革新的な治療法の実現に結びつくものと期待される。

薬剤処理によって肺がんの増殖が抑制された