博報堂が11月19日に実施したセミナーのレポートによると、「爆買い」がしばしば話題に上り、実際に人数・日本での消費額とも大きく伸びている訪日中国人は、20~30代で子供がいる既婚者が多く、学歴・年収とも高めの傾向にあるという。また、購入する店舗や商品は来日前に情報収集し、サイトの情報よりも旅行者の生の声や口コミを重視する傾向にあるとのことだ。

同セミナーは「インバウンドトレンドを戦略的に活用する! 『訪日客の消費行動データに基づく、最新グローバルマーケティング』」と題して、インバウンド・マーケティング戦略に必要なデータ収集と分析を可能にするという同社独自のソリューションである「IMBA」の開発・運営を担当する、同社グローバルMD推進局GMの木戸良彦氏及び岩佐数音氏が、インバウンドを「ブランドと外国人との接点」と捉え、統合的なグローバルマーケティングに繋げていくための視点や方法論について語ったもの。

博報堂グローバルMD推進局ソリューショングループGMの木戸良彦氏

博報堂グローバルMD推進局の岩佐数音氏

訪日中国人の層を分析したところ、男女ともに30代が最多で20代が続き、男女比では女性が男性よりも若干多いという。既婚者が約85%を占め、また子供がいる人が約80%を占めている。

世帯月収のボリューム・ゾーンは1万元から2万6,000元(日本円でおよそ20万円から52万円)で、3万元(およそ60万円)以上の人も多く、来日しているのは一般層から富裕層であり、比較的高学歴の人が多いという。

夫婦やカップルでの訪日が多く、次に友人、子供との同行が多いとのこと。初来日の人は約32%であり、2回以上のリピーターが約7割を占める。また、個人旅行が約7割を占めているという。

訪日中国人が何を購入しているかを見ると、大分類ではインバウンドで人気と言われる美容化粧品や菓子類が多く、調査対象となった訪日中国人の半数以上が購入しているという。小分類で多いのは基礎化粧品、チョコレート、衣類だが、日本酒や一眼レフカメラ、カップラーメンなど、日本ならではの商品の購買率も高いとのこと。

日本で購入した商品を今回初めて買った人は20%程度に止まり、過去に購入したことがある商品を訪日時に購入するリピート買いが多いという。購入した商品が自分用と答えた人は約80%に上り、友人などのためのお土産用という回答も5割弱あったとのこと(複数回答)。そのお土産用の商品は、自分自身で決定するケースが9割以上を占める。

購入場所で最も多いのはショッピング・モールで、大型スーパーマーケットが続くとしている。

購入する店舗や商品を決定する要因のうち、いつ情報を収集しているのかでは、訪日中国人の3人に2人が訪日8週間前から2週間前にかけて旅行に関する情報収集をしており、特に多いのは訪日3~4週間前とのことだ。日本で購入したい商品の3分の2は訪日前に決めており、特に単価の高い物の購入は訪日前に決定する傾向が強いとしている。買い物リストの作成時期は訪日前1カ月以内が多数という。

訪日前の旅行の情報源としてよく利用しているのは、日本政府観光局の公式Webサイトと中国の有力旅行予約サイトである「Ctrip」とのこと。訪日前の商品の情報源としては、ECサイトである「天猫」や自国の友人の口コミといった、日常的に触れているメディアをよく利用している。

また、「百度旅游」や「日本旅游攻略(微博アカウント)」といった中国ならではの旅行メディアも使用しているという。その他では、親族・知人の口コミや旅行ガイドブックなどが挙げられる。

日本の商品情報に関しては、「微博」(Twitterに相当)や「微信」(LINEに相当)といったソーシャル・メディア上の日本情報を発信する公式アカウント(公衆号)が大きな影響力を持っているとのこと。

訪日中の旅行の情報源としては、訪問先である自治体の観光協会のWebサイトと、「Japan-i暢游日本」「購物淘」といった訪日中国人向けフリーペーパーをよく利用している。訪日中の商品の情報源では店頭スタッフやPOPが重要になっている他、前述のフリーペーパーなど持ち運べる紙媒体も強い情報源となっているという。

訪日前・訪日中を問わず行動決定に大きな影響力を持っているのは、旅行者の生の声や口コミだとのこと。日本政府観光局の公式Webサイトや百度旅游などの情報サイトは存在するものの、多くの人たちが検索経由でいくつかのサイトを回遊し、生の声の記事を見て情報を収集しているのが実態だとしている。