政府の宇宙開発戦略本部(本部長・安倍晋三首相)が「宇宙基本計画」の工程表改訂案を決定した。8日開かれた同本部会合では、国際宇宙ステーションを2024年まで運用延長するという米国提案の構想に参加する方針を決めた。このほか、情報収集衛星を現在の4基から10基に増やす計画も決めた。

国際宇宙ステーションは、米国、日本や、欧州、ロシアなど15カ国が参加、国際協力で建設された国際的な有人実験施設。日本は日本実験棟「きぼう」を建設した。参加各国は、20年までの運用に合意しているが、米国が24年までの運用延長を提案していた。今回の決定は米国の意向に沿った形だが、今後9年に及ぶ運用期間中、アジア諸国に 「きぼう」での実験機会を提供する方針。

アジア地域では中国が新たな宇宙大国として台頭しつつある。「きぼう」の実験機会提供は、宇宙活動手段を持たないアジアの発展途上国に活用してもらうことで、宇宙分野で日本や米国の立場を高める狙いもあるとみられる。

国際宇宙ステーションは2011年に完成。高度400キロの地球周回軌道を約90分で1周する。宇宙飛行士の居住棟や実験棟、太陽電池パネルなどで構成される。運用延長の計画は、米航空宇宙局(NASA)が昨年1月に国際宇宙ステーションを有人火星探査に向けた基地に位置付けるとして参加各国に提案。カナダ、ロシアは参加表明したが、日本と欧州は保留していた。

情報収集衛星を増やすことについては、北朝鮮のミサイル発射監視などのほか、自然災害の状況把握も目的としている。関係者によると、4基でも地上のどこでも1日1回撮影可能だが、10基にすると特定の場所を狙う撮影チャンスが一気に増える、という。

安倍首相は宇宙開発戦略本部会合で「GDP600兆円に向けた生産性革命において、宇宙分野を柱の一つとして推進する。特に、民間による宇宙開発利用を支援する」と発言。安全保障面での利用拡大だけでなく、宇宙産業の強化策も推進する考えを示した。具体的には自動車の自動走行、農業機械や建設機械の自動運転などを想定している。

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