ルネサス エレクトロニクスは12月2日、同社の車載コンピューティングプラットフォーム「R-Car」の第3世代品として第1弾となるハイエンドSoC「R-Car H3」を発表した。

同製品は、自動運転の実現に向けた自動車の安全性の向上や、ドライバーなどへの柔軟な情報提示を目的として開発されたもの。プロセッサコアには64ビットARMコアとなる「Cortex-A57/A53 4コア(合計8コア)」を採用し、40000DMIPS以上の処理性能を実現したほか、グラフィックスとしてImagination Technologies(IMG)の「PowerVR GX6650」を採用。これにより、従来のR-Car H2比で約3倍のシェーダ―演算性能を実現したという。

また、独自の並列プログラマブルコア「IMP-X5」も搭載。従来のIMP-X4比で4倍の認識処理性能を実現したとするほか、内部バスアーキテクチャの最適化とDDRメモリのバンド幅を向上させ、LPDDR4に対応したことにより、H2比で4倍のメモリバンド幅を実現。加えて、独自の動画処理コアもH2比で2倍の性能を実現したとのことで、動画コンテンツの4K対応や複数ディスプレイの同時動画再生などを可能とする。

さらに、プロセスとしてはTSMCの16nm FinFET+を採用したほか、自動車用機能安全規格「ISO26262(ASIL-B)」に対応。加えて、チップ単体のほか、DDRメモリをすでに実装したSiPモジュールも用意。これにより、ユーザーの開発工数の負担軽減を可能とした。同モジュールには初期ブートに必要なシリアルフラッシュメモリも搭載しているため、ブートからメモリ動作までの一連の動作に関する設計工数の削減も可能となっている。

プロセスの微細化、CPUの高性能化/64ビット化、DDR4の採用などによりR-Car H2比でR-Car H3は大きく性能を向上させた

同社車載情報システム事業部 車載情報戦略部の吉田正康部長は、「第3世代R-Carプラットフォームは、『HMIコンピューティングとコグニティブコンピューティングを同一アーキテクチャ』、『車載ユースケースを前提とした最適化ソリューションを提供』、『さらなる自動車システムの進化に向けて、R-Carも継続的に進化』の3つを掲げて開発されてきたもの。クルマにおける安全とセキュリティが従来以上に重要視されるようになっており、機能安全が基本要求になっている。R-Car H3は、こうした要求に対応するべく、高性能IPを統合することで、低レイテンシを追及して生み出された」と、同製品の開発背景を説明する。

各種の高性能IPを統合し、さらにそれらを最適化することで低レイテンシを実現したとする

「自動車のソフトウェア開発は複雑化しており、ルネサスではそうした課題の解決に向け、パートナーとともにソリューションの強化を図っている。すでに170社以上のパートナーと協力して、カスタマの開発をサポートしており、今後も海外を中心にパートナーを増やし、グローバルでの車載製品の開発に向けたサポートを強化していきたい」(同)としている。

R-Car H3搭載のシステム評価ボードと、それを用いたソリューションイメージ

なお、同製品の量産は2018年3月から開始する予定で、2019年3月には月産10万個規模の生産を計画している。

R-Car H3のSoC(上段右)と、SiPモジュール(下段)。SiPモジュールのDRAM容量については、複数種類を用意し、カスタマのニーズに応じていきたいとのこと