Qualcomm Snapdragonを積むシングルボードコンピュータ「Dragon Board」。日本でも11月末に出荷開始の予定だが、先日開催された「IoT Technology 2015」を取材した折、Dragon Board 410cをいち早く借りることに成功した。早速、プリインストールのAndroid 5.0(Lollipop)を使い、その実像に迫ってみたい。

SoC部分のステンレスプレートが外されたDragon Boardの全景図(ハードウェアマニュアルより)

DragonBoardでなにができるか

Dragon Board 410c(以下、Dragon Board)には、容量8GBのSanDisk製eMMCがオンボードで搭載されている。工場出荷時点ではAndroid 5.0(Lollipop)がプリインストールされており、電源を投入すればAndroid端末として動作する。GMS認証を取得していないため、Google PlayやGmail、Google Mapsなどのアプリはバンドルされないものの、Android端末で豊富な実績を持つQualcommのSoC「Snapdragon 410」、GPU「Adreno 306」を直接試せる環境であり、Androidアプリのプロトタイプをテストする環境として重宝されそうだ。

拡張性は3基のUSB 2.0ポート(A端子×2、micro B端子×1)と、2種類の拡張スロットにより確保。USBポートはキーボード/マウスに使えることはもちろん、ドライバを用意すれば各種USB機器も利用できる。実利用を重視したためかUSBポートは1列に並べられ、ケースに収めてもかなり薄いものに仕上がりそう。電源はACアダプタなので、Raspberry Piのようにモバイルバッテリーを電源として使うことはできないものの、タフさと長時間の安定稼働という点ではDragon Boardが有利だ。

スマートフォン水準の通信環境を、ボード1枚で利用できる点も大きい。Ethernetは非対応だが、無線LAN(IEEE 802.11b/g/n、2.4GHz)とBluetooth 4.1をオンボードで搭載し、貴重なUSBポートを消費せず通信とBluetooth周辺機器を賄うことができる。最大13メガピクセル対応のイメージシグナルプロセッサも搭載されているので、監視カメラにも応用可能だ。

ボード中央右にある正方形のステンレスプレート下には、Wi-FiとBluetooth、GPSのチップが搭載されている

給電はACアダプタ経由で行うため、モバイルバッテリーを利用できるRaspberry Piのほうが機動性では上回る

Android以外のOSを利用してもいい。microSDスロット×1基を、裏面のディップスイッチを切り替えることで起動ディスクとして使用できるうえ、eMMCにOSを書き込むことも可能だ(プリインストールのAndroidを置き換える)。本稿執筆時点では、AndroidのほかにLinux(Ubuntu 15.04)、Windows 10 IoT Coreがサポートされており、いずれもeMMCをブートディスクとしてシステムを運用できる。

プリインストールのLollipopにはメールアプリのほか、静止画/動画/音楽再生アプリ、Webブラウザ(Firefox)も収録されているので、デスクトップPCとして使うこともじゅうぶん可能。アプリパッケージ(APK)を追加し、自力で環境整備してもいいだろう。動画ではH.264/H.265、音声ではPCM/AAC+/MP3/WMAのハードウェアデコードに対応しているため、小型AV端末などのホビー用途も期待できる。

■DragonBoard 410cの主要スペック
プロセッサ Snapdragon 410(Cortex-A53/4コア、クロック最大1.2GHz)
GPU Adreno 306(400MHz)
メモリ 1GB(LPDDR3 533MHz)
映像出力 HDMI(Type A)
通信機能 2.4GHzのIEEE 802.11b/g/nに準拠した無線LAN(Wi-Fi)、
Bluetooth 4.1、GPS
I/O USB 2.0(A端子×2、micro B端子×1)、40ピン拡張コネクタ、
60ピンハイスピードコネクタ、microSDスロット(SD 3.0、UHS-I)