大阪市立大学は11月24日、理論的に予測されてきた非平衡状態にある量子液体の挙動を詳細に明らかにすることに成功したと発表した。

同成果は、大阪市立大学大学院理学研究科 小栗章 教授、東京大学物性研究所 阪野塁 助教、大阪大学大学院理学研究科 小林研介 教授、同理学研究科 Meydi Ferrier 特任研究員、同理学研究科 荒川智紀 助教、同理学研究科大学院生 秦徳郎氏、藤原亮氏らの研究グループによるもので、11月23日に英科学誌「Nature Physics」のオンライン版に掲載された。

量子液体とは、多数の粒子が量子力学的に相互作用し、一体となって振る舞う「量子多体現象」を示す粒子の集団のことをいう。「超伝導」や「超流動」は、電子や原子が量子液体を形成することによって引き起こされる量子多体現象の代表例となっている。

量子液体の振る舞いは、粒子1個の場合とは大きく異なる

同研究グループは、量子多体現象の典型的な例となる「近藤効果」によって形成された量子液体の性質を、カーボンナノチューブを用いて作製した人工原子を用いて調査した。今回の研究では、人工原子に加える電圧や磁場などを制御することによって、理想的な近藤状態を実現。さらに電流だけではなく、電流に含まれる「電流ゆらぎ(雑音)」を精密に調べた結果、さまざまな近藤効果について、有効電荷を高精度で検出した。またこの有効電荷から、量子液体を特徴づける量「ウィルソン比」を求めると、同研究グループの人工原子が、非平衡状態にあるにもかかわらず、極めて強い量子多体現象を示していることを実証できた。この有効電荷とウィルソン比は、最新の非平衡近藤効果に関する理論の予言と高い精度で一致したという。

これまで超伝導や超流動といった量子液体の示す不思議な現象の研究は、主に平衡状態にある場合について行われてきたが、今後、量子液体の性質を非平衡の領域まで拡大して調べることによって、物質の新しい性質・機能を見出せる可能性が期待されるという。