2015年11月15日に、Mozilla Japan主催のFirefox Developers Conference 2015が開催された。テーマは「Inspect, Hack, Ignite!」で、直訳すれば「調べる、ハックする、点火する」といったところだろうか。最新の開発ツールなどを使った分析、それらから導かれる知見による新たな実装、そして、Webの将来を照らす灯に点火する……そんなセッションが多数用意された。

そして、Mozillaのイベントである。決して遊び心も忘れていない。当日、受付を済ませると名札などと一緒に紫の仮面が渡された。

図1 紫のプライベート仮面

これは、Firefox 42やFirefox for iOSに搭載されたプライベートブラウジングへ遷移するボタンを表したものだ。当日の最後、発表者や参加者らの記念撮影では、この仮面をつけて撮影が行われた。また、当日、Mozilla Japan代表理事の瀧田佐登子氏は、リアルな仮面やリンゴを手に持って行動していた。

午前中はキーノート

午前中は、キーノートが開催された。まず、登壇したのは、Mozilla Japan代表理事の瀧田佐登子氏である。

図2 Mozilla Japan代表理事 瀧田佐登子氏

くしくも11年前の2004年11月9日は、Firefox 1.0がリリースされた日である。そして、2015年11月12日には、Firefox for iOSがリリースされたことを報告し、会場を盛り上げた。1998年のMoziila Project以来のMozillaの歩みを振り返った。そこでは、オープンであり続けること、信頼できるWebをユーザーに定着させていったことを語った。そして、今後もWebをきちんと使いましょう、そして、Webで何ができるのか。それを考えることが、今回のカンファレンスのセッションであると述べた。また、瀧田佐登子氏はMozillaマニフェストを紹介していた。

図3 Mozillaマニフェスト

こちらで翻訳されたものを読むことができる。新しい技術や製品への取り組みも重要であるが、今一度、読み返してみると考えさせられることもある。

次は、事前のプログラムには掲載されていないMozilla CorporationのテクニカルエバンジェリストのDietrich Ayala氏が登壇した。どうやらこれも演出のようであった。

図4 Mozilla Corporationテクニカルエバンジェリスト Dietrich Ayala氏

Dietrich Ayala氏は、今まででは予想もつかないようなWebのパワーやプロジェクトを紹介した。その1つとして、Web VRを取り上げた。VR(バーチャルリアリティ)をWebコンテンツに取り込むものである。実際に、デモを体験したユーザーの反応には、共通のパターンがあるとのことだ。たいていが上を見ているが、下を見てもらうことでより大きな驚きとなる。実際、どのようなものかは想像できなかったが、それを実現するためのテクノロジも紹介された。

図5 Web VRを実現するテクノロジ

A-Frameは、HTMLのみを使ったVR用のAPIである。Web VR Starter Kitは、JQuery的なAPIとのことだ。そのほか、Firefox OSをRaspberry Piにインストールし、Webプラットホームとして教育に展開する例、さらに、医療機関での応用も紹介した。セキュリティやプライバシーが重要視され、医療機関で必要な機器として構築された。Mozillaでは、このような応用例はまったく想定されていなかった。

次に登壇したのは、Mozilla Japanモバイル&エコシステムマネージャの浅井智也氏である。

図6 Mozilla Japanモバイル&エコシステムマネージャの浅井智也氏

ちょうどリリースされたばかりのFirefox for iOSのについて機能紹介などを行った。iOS版がiOS 8以降に対応する理由について、従来のiOSではWebへのアクセスするAPIでUIWebViewであった。それが、WKWebKitになり、Safari並みのJavaScriptエンジンとなった。さらにCPU使用率なども大幅な改善となり、これならばユーザー体験としても、Webの互換性においても、デスクトップのFirefoxと同等のレベルを達成できると判断したとのことだ。

そして、今後のFirefoxの開発戦略にもふれた。Firefoxの特徴の1つとして、セキュリティやプライバシーなどユーザーが信頼して使えることをあげた。

図7 Uniquely Firefox - 信頼

Mozilla自身も、もっとも信頼されるインターネット企業と評価されている点を強調していた。この取り組みの1つが、Firefox 42のプライベートブラウジングにおけるトラッキング保護である。他にも、URLさえシェアすれば(個人情報は不要)、チャットができるFirefox Hello、リーダーモード、縦書などを紹介した。

次いで登壇したのは、Mozilla CorporationプロダクトマネージャのJoe Cheng氏である。2014年6月よりMozilla TaiwanにてFirefox OS製品のプロダクトマネージャーを務める。

図8 Mozilla Corporationプロダクトマネージャ Joe Cheng氏

Firefox OSの仕組みなどを解説し、Webベースのプラットフォームであることを強調した。そして、次のバージョンとなる2.5は、パーソナライズ可能、カスタマイズ可能、信頼できることの3つの特徴を持つ。具体的には、アドオンやコンテンツのピン化などをあげた。また、プライバシーを守るため、トラッキング保護をOSにも導入する。そして、2.5以降の予定も示された。

図9 Firefox 2.5以降の予定

具体的な内容はなかったが、モバイル端末だけでなく、Smart TVなどへの実装も大きな要素となりそうである。

最後に登壇したのは、Mozilla CorporationプロダクトマーケティングマネージャのMarvin Khoo氏である。Mozillaでは、Firefox OSの事業位置付けやマーケティング用のコピーの作成、製品の啓蒙活動を行っている。

図10 Mozilla Corporationプロダクトマーケティングマネージャ Marvin Khoo氏

まずは、現在のモバイル環境について紹介した。その中で、デスクトップとモバイルの通信量の比較で、モバイルが41.12%となり、将来はデスクトップを上回ると予測する。そして、Firefox OSのオープン性や拡張性の高さを紹介した。Firefox 2.5以降は、Participationハブを展開する。Webをよりよくしたいユーザーらによる貢献、セキュリティのレビューなどで、Mozillaの展開するプログラムを知っていただき、フィードバックをしてもらいたいとのことだ。このParticipationハブには、いろいろなトピックがある。

図11 Participationハブ

特に移植については、協力が必要とのことだ。多数のデバイスに対応するためには、フィードバックが不可欠となる。そこで、皆さんの協力を期待しているとのことだ。

お昼休みはMozBusで

午前中のキーノートが終了し、お昼休みとなった。そこでもイベントが用意されていた。MozBusに乗って、30分ほどのツアーに臨むというものだ。参加人数は4人と限られていたが、楽しいイベントとなったようである。

図12 MozBus

また、会場にはいくつかのブースも設置され、展示などが行われていた。

図13 当日設置されたブース