東北大学(東北大)は11月17日、SmやNd、Dyなどのレアアース元素を全く含まない“レアアースフリー”なFeNi磁石の作製に成功したと発表した。

同成果は、同大学 リサーチプロフェッサー 牧野彰宏 教授らの「東北発 素材技術先導プロジェクト(文部科学省)超低損失磁心材料技術領域」の研究グループによるもので、11月16日付けの英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

レアアースに依存しない高性能磁石を新規で開発することは、現在の重要課題となっている。宇宙空間で超徐冷(超平衡状態)して形成された天然隕石中に極微量含まれるFe-Ni磁石は1960年代から知られており、ネオジム磁石並みの磁石特性を示すとの予測も報告されていたが、形成に数十億年かかるため人工的に短時間で作製することは不可能であると考えられていた。

今回作製に成功したレアアースフリー磁石は、Fe-Si-B-P-Cu系ナノ結晶軟磁性合金「NANOMET」中のFeをNiで一部置換したFe-Ni半金属合金を用い、液体急冷して原子配列が無秩序となったアモルファス金属を熱処理し、ナノ結晶化させることで得られた。アモルファス金属は猛烈な速度で結晶化が進行するため、数十億年かかかる天然隕石中のFe-Ni規則相の生成時間は、約300時間にまで短縮できたという。同磁石は高価な元素を含まないため、原料価格は著しく廉価となる。

今後は、新物質としての詳細な基礎的物性、磁気特性の把握を優先し、並行して実用材料としての研究・開発を進めていく予定。また、工業化への課題の抽出およびその解決法の構築後、モータなどへの実装を目指した応用研究も推進していく計画だとしている。

L10-FeNi相の生成の模式図