岡山大学はこのほど、イネの生育に欠かせないマンガンの吸収に必要な排出型輸送体タンパク質「OsMTP9」を突き止めたと発表した。

同成果は同大学資源植物科学研究所の馬建鋒 教授と高知大学教育研究部総合科学系生命環境医学部門の上野大勢 准教授らの共同研究グループによるもので、11月9日(現地時間)の「Nature Plants」に掲載された。

マンガンは主に植物の光合成において、水を分解して酸素を発生させる過程に必要な元素で、植物はマンガンを根によって土壌から吸収している。

これまで、同研究グループは、土壌側から根の細胞内に取り込むために必要な輸送体「OsNramp5」を発見しているが、細胞内に取り込まれたマンガンを導管のある中心柱に向かって再び細胞の外に排出し地上部まで送り届ける輸送体は特定されていなかった。

今回の研究で発見されたOsMTP9はOsNramp5と同じく根の外皮細胞と内皮細胞に存在するが、OsNramp5は根の外に向かって偏在しているのに対し、OsMTP9は根の内側に向かって偏在していた。この遺伝子を破壊すると、マンガンの根への吸収と地上部への転流が大幅に減少し、その結果、イネの収量も低下したという。

今回、イネのマンガン吸収に必要な輸送システムが明らかになったことで、この仕組を応用し、マンガンの吸収の能力を高めることによって、マンガンの少ない土壌でも生育できる作物の開発につながると期待される。