世界ファウンドリランキング6位のTower Jazzが、2015年10月に東京にてプライベートカンファレンス「Tower Jazz Global Symposium Japan」を開催した(図1)。米国や韓国で行っている同社主催の顧客向けイベントの日本版にあたる。

同社は、2014年4月に、日本にパナソニックと合弁企業、パナソニック・タワージャズセミコンダクター(英語名:TowerJazz Panasonic Semiconductor、略称はTPSCo)を設立し、日本でもファンドリとして半導体の製造を開始している。しかし、実はTower Jazzとしての日本への進出としてはそれ以前からも、2011年6月に米国Micron Technologyから兵庫県西脇の半導体工場(もともとは神戸製鋼と米TIの合弁DRAM製造工場)を買収し、TowerJazz Japanとして生産活動を行っていたが、こちらはTPSCo発足とともに閉鎖され、運輸会社へと売却された。

図1 TowerJazz Global Symposium 2015 JAPANの会場風景

図2 TowerJazz CEO兼日本法人TPSCo会長のRussel Ellwanger氏

まず最初に、TowerJazz CEO兼日本法人TPSCo会長を務めるRussel Ellwanger氏(図2)が基調講演を行い、TowerJazzのグローバルな全体像を話した。同氏は、オランダPhilips Semiconductor(現在のNXP Semiconductors)、半導体製造大手の米Novellus Systems(2011年にLam Researchが買収)、同じく米Applied Materials(AMAT)を経て2005年にTowerJazzのCEOに就任した。

「現在、TowerJazzとしては、イスラエル国内に、200mm(デザインルール0.18~0.13μm、生産能力43K wafers/month)と150mm(1~0.35μm、16K wafers/month)の2つのファブと設計センターがある。米国カリフォルニア州ニューポートビーチには100%子会社Jazz Semiconductorの200mmファブ(0.5~0.13μm、24K wafer/month)がある。そしてTPSCoには旧パナソニックの北陸3工場(後述)があり、TowerJazzグループ全体では世界に6カ所の工場を持ち、1μmから45nmまで対応可能な世界最大のアナログ専業ファウンドリ・ビジネスを展開している」(Ellwanger氏)。

また、「グループ全体の売上高は、2005年には、わずか1億ドルだったが、2014年には8.4億ドルに成長し、今年は9.55億ドルを予定している(表1)。来年は前年比15%増となる11億ドルと常に2桁成長を続けている。仮に6工場がフル稼働した場合の生産能力は13億ドルと見積もられる。生産能力には未だ数億ドル分の余裕があるので、顧客の皆様はもっとどんどん注文を出していただきたい」と同氏は、生産能力に余裕があることをアピールしたほか、「世界専業ファウンドリランキングで、当社は、台湾TSMC、米国GLOBALFOUNDRIES(GF)、台湾UMC、中国SMIC、台湾Powerchip Semiconductor(PSC)に次いで6位につけているが、2005年の時点ではトップ10の枠外だった。2005年以来の成長率では、当社は他を大きく引き離して、世界で一番急成長しているファウンドリだ」と、急成長を強調。「今後もアナログ・スぺシャリティ・ファウンドリの雄として、継続的に成長しているアナログ市場で、顧客の声に耳を傾け、顧客から大いに学びながら、有言実行を旨として発展していきたい」と話を結んだ。

西暦(年) 売上高(100万ドル) 備考
2005 102 世界のファウンドリランキングは11位
2010 509 世界のファウンドリランキングは6位
2014 838 同上
2015 955 2015年上半期の実績に基づく予測値
2016 1100 (同社予測)
201X 1300 現在の生産能力=全ラインがフル稼働したと仮定した場合の売上高

TowerJazzグループの売上高推移

先端アナログプロセス製品を日本で製造

図3 TPSCo CEOのGuy Eristoff氏

次に、TPSCo CEOのGuy Eristoff氏(図3) が、TowerJazzとパナソニックとの合弁企業の概要を紹介した。「当社は、2014年4月1日、TowerJazz(正確にはイスラエルTower Semiconductor)51%、パナソニック(正確にはパナソニック・セミコンダクター・ソリューションズ)49%の出資で設立された。北陸3地区に旧パナソニックの半導体工場を有し、1800人の従業員により、0.5μmから45nmまでの幅広いプロセスソリューションを提供するとともに、組み立て、最終検査、設計サービスまで手掛ける。3カ所の半導体工場所在地およびウェハ口径、デザインルール、生産規模は、新潟県の新井工場が200mmで0.13~0.11μmに対応(月産1万4000枚)、富山県の砺波工場が200mmで0.5~0.15μmに対応(月産5万1000枚)、富山県の魚津工場が300mmで65~45μm(月産2万枚)である(図4)。いずれも、以前はパナソニックの主力半導体工場だったところだ。0.13μmまでは、TowerJazzと世界規模で協業して生産を拡大をめざしており、0.11μm以降の先端製品は、すべて日本のファブで対応する体制となっている。

図4 TPSCoの3カ所の半導体工場。もともとはパナソニックグループの半導体工場だったが、現在はTowerJazzとパナソニックの合弁企業が所有・運営している

事業分野としては、車載、情報・産業、民生の3大分野で、さまざまな最終製品(図5中に表示)に必要な半導体デバイスを顧客の要求に応じて製造している。特に、力を入れている車載分野(図6)は、すでに1980年に(当時の松下電器として)電子部品の製造を開始しており、1987年にはGrade1製品を生産開始している。過去30年間に累計5億個を越える車載部品を製造・販売した実績を踏まえて、TPSCoでは、図6に示したような広範囲の半導体デバイスを提供に力を入れていく。

図5 TPSCoの3大事業分野

図6 松下・パナソニック時代からの実績に基づき、さらに注力していく車載分野。車載カメラ、バッテリー管理、ITS、空調コントローラ、LANドライバ、電源供給、車載コントローラ、ヒューマン・マシン・インタフェ―ス、オーディオ、エンジン制御、照明など広範囲に対応

製品ポートフォリオとしては、アナログ/ミクスドシグナルCMOS、高周波RF/ミリ波、高耐圧PMIC/BMIC、CMOSイメージセンサ(CIS)/CCD、そしてディスクリートパワーデバイスを中心に据えている(図7)。

図7 TPSCoの半導体製品ポートフォリオ

ロジックに関しては45nmまで対応可能である。RF CMOS/SOIとCIS/CCDについては、65nmまで、ミクスドシグナルは130nmまで、HV CMOSは0.15μmまで、SiGeは180nmまで(TowerJazzは130nmまで)、BCDは0.25μm(TowerJazzは180nm)まで対応可能である。MEMSはTowerJazzで対応している。IDMやファブライトの顧客独自のプロセスをTPSCoの工場に移管するサービス(TOPS)も行っている。

パナソニック時代から強みを発揮していたCIS(CMOSイメージセンサ)は、独自の積層導波路構造と超深度のフォトダイオードの組み合わせにより、世界最高クラスの性能の量子効率、飽和特性および低暗電流、低白キズ特性を実現する画素を提供している。65nm CISプロセスは1.12μmから6μm以上の画素サイズと、センササイズはサイズの小さいVGAから1次元、もしくは2次元の繋ぎ合わせ露光技術による35mmフルサイズ以上のセンササイズにも対応している。X線アプリケーション用の300mmフルウェハレベルのセンサも製造可能であるという。2016年の第1四半期にはグローバルシャッタープロセスも提供できるようになる見込みのほか、新しい光技術を用いた超高QE値のセンサプロセスを開発しており、2017年にサンプル提供を予定している。

TPSCoは、300mmウェハを用いた先端RF製品に関しては、2015年第4四半期に、2.5V RFスイッチプロセスのデザインキット(PDK)のリリースを行う予定としており、2016年第2四半期に、RFフロントエンド・ソリューションのためのデュアルゲート1.2V/2.5VのPDKをリリースする予定である。さらに、65nmプロセスを用いた77GHzミリ波RFCMOS技術PDKをまもなくリリースする方向で開発を進めている。

TPSCoは、「(人々の)生活はアナログだから」をキャッチフレーズとして、社名ロゴの下に入れており、ビジョンとして「日本でアナログ半導体のルネッサンスを先導する」を謳い、アナログ専業ファウンドリ・ビジネスに特化する姿勢を見せている。

なお、東芝は、10月末に、同社大分工場を子会社の岩手東芝エレクトロニクスに統合し、新会社を発足させ、アナログ半導体を中心としたファウンドリ・ビジネスを展開すると発表しており、TowerJazz/TPSCoがどのように迎え撃つのか注目される。