米Wind Riverの日本法人であるウィンドリバーは11月4日、クラウドベースのSaaS製品「Wind River Helix App Cloud(Helix App Cloud)」「Wind River Helix Lab Cloud(Helix Lab Cloud)」ならびにOSプラットフォーム「Wind River Rocket」「Wind River Pulsar Linux」を同社のIoT向けポートフォリオに加えると発表した。

今回発表された4製品(赤字)の位置づけ (資料提供:ウィンドリバー)

「Helix App Cloud」はクラウド上でのアプリケーション開発を可能とする製品。これにより、タブレットなどでもブラウザベースでアプリケーション開発を行うことができるようになるほか、遠隔地のチームメンバーとも連携しやすくなるなどのメリットがある。

もう一方の「Helix Lab Cloud」では、開発したアプリケーションのシミュレーションを行うことが可能となる。IoTシステムでは多数のデバイスがネットワーク化されるため、物理的な検証を行うとコストが高くなってしまうが、「Helix Lab Cloud」を利用すれば検証コストを抑えることができる。

米Wind Riverのプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントであるディニア・ダスツール氏

今回発表された「Helix App Cloud」と「Helix Lab Cloud」は、同社が2014年に提供を開始したクラウド型プラットフォーム「Wind River Helix Device Cloud(Helix Device Cloud)」と共に「Wind River Helix Cloud(Helix Cloud)」としてスイート化される。アプリケーションの開発環境である「Helix App Cloud」、IoTシステムのシミュレーション環境である「Helix Lab Cloud」、デプロイしたIoTデバイスとそのデータを管理するクラウド型プラットフォームである「Helix Device Cloud」が揃ったことで、IoTシステムにおける開発からデプロイまでをカバーするクラウド環境が出来上がったことになる。「Helix Cloud」について米Wind Riverのプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントであるディニア・ダスツール氏「IoTシステムではデバイスおよびネットワークの寿命が長いが、技術・環境が常に変化している。そこで重要となるのはアプリケーションを開発、検証、デプロイするインフラを整えることだが、それを提供するのがHelix Cloudだ。」と説明する。

「Helix App Cloud」「Helix Lab Cloud」「Helix Device Cloud」が揃ったことで開発からデプロイまでをカバー。(資料提供:ウィンドリバー)

「Wind River Rocket」は、4KBという小さなフットプリントのリアルタイムOSで、32 bit MCUで動作するスモールフットプリントのセンサーハブやウェアラブルデバイスなど向けのOSとなる。一方、「Wind River Linux」は32 bit MCUから64 bit CPUまで対応するアプリケーション向けのバイナリLinux OSとなっている。いずれのOSもマルチアーキテクチャをサポートし、「Helix Cloud」に直接接続される。今後、インテルとARMアーキテクチャのサポートに加え、主要な商品ボードをサポートしてく予定だという。なお、両OSとも無料で提供される。

「Wind River Rocket」はセンサー向けであるのに対し、「Wind River Pulsar Linux」はデバイスおよびゲートウェイ向けとなっている。(資料提供:ウィンドリバー)

ダスツール氏は今回の製品拡充について「クラウド分野における(Wind Riverの)存在感を高めるだけでなく、既存の事業を拡張するものであり、より大きなマーケットセグメントをカバーできるようになる。新しいOSプラットフォームはクラウドに接続し、マルチアーキテクチャに対応しているため、ユーザーはPoC(プルーフオブコンセプト)を迅速に実行することができ、非常に早い段階での商品化を最小限のコストで実現することが可能となる」とコメントし、IoTシステムを運用する上でWind River製品を使うメリットを強調した。