デジタルマーケティング・ソリューションに対する需要が活況を示している。そこで、2回にわたり、デジタルマーケティング・ソリューションの1つである「Data Management Platform(以降、DMP)」を活用して、マーケティング担当者がデータ指向でマーケティング活動を進めていく方法を考えてみたい。

前編となる今回は、「オープンDMP」と「プライベートDMP」の違い、DMP導入のポイントとして改正個人情報保護法の動向を紹介しよう。

DMPとは何か?

DMPを日本語に直訳すると、データのマネジメントを行うプラットフォームという漠然としたものになるが、ここでのデータとは自社のビジネスにおけるターゲット・オーディエンスを明確にするためのデータを表している。

米Forrester Researchは、2011年に発表したレポート「The Data Management Platform: Foundation for Right-Time Customer Engagement」でDMPを以下のように定義している。

DMPとは、ファーストパーティー・データ(自社が保有するデータ)、セカンドパーティ・データ(パートナー企業が保有する自社に関するデータ)、サードパーティー・データ(外部が保有するデータ)を集約・正規化・セグメンテーションを行った見込み顧客や顧客のデータを、マルチチャネル環境で利用できるようにした統合化されたテクノロジープラットフォームである。

適切なオーディエンスを特定するためのセグメンテーションは、マーケティング・キャンペーンのROIを最大化するうえで重要なプロセスである。この定義を見ると、マーケティング担当者にとってのDMPは、「適切なオーディエンスを特定し、適切なタイミングで、適切なアクションを実施する」というデジタル・マーケティングの基本原則を忠実に実践するためのデータ・プラットフォームであることがわかる。

「オープンDMP」と「プライベートDMP」

データの種類と量が爆発的に増加するビッグデータのトレンドは継続しており、マーケティング担当者はデータをどのように自社の業務に生かすべきかに苦心している。単に各種データソースからデータを集めるだけでは意味がない。マーケティング担当者が必要としているのは、さまざまな属性を基にデータを整理し、ブランドがターゲットとする顧客セグメントという形式に変換して提供するソフトウェアあるいはサービスである。

DMPは「オープンDMP」と「プライベートDMP」の2種類に大別される。ちなみに、上記の2011年の定義ではデータの所有者に基づきデータソースを整理しているが、最近ではデータの所在(社内/社外)でDMPが議論されることが多く、セカンドパーティー・データが意識されることは少ない。

オープンDMP

外部が保有するサードパーティー・データを、年齢や性別といったデモグラフィック属性、興味・関心・嗜好といったサイコグラフィック属性、よく利用する購買チャネルなどのビヘイビアル属性を基に、購入企業がターゲットとして利用できる顧客セグメントの形式に変換されたデータ、およびその顧客セグメントを活用する仕組み。

プライベートDMP

サードパーティー・データとファーストパーティー・データ(自社で保有している顧客情報や商品情報といったトランザクションデータ)を統合し、ターゲットとして利用できる顧客セグメントの形式に変換されたデータ、およびその顧客セグメントを活用する仕組み。

DMPは、アドテクノロジーの領域で注目され、広告代理店、メディア企業、事業会社の広告宣伝部門がターゲットに最適な広告を配信するためのテクノロジーとして発展してきた。そのため、オープンDMPもしくは単にDMPと呼ぶ場合は、広告配信を最適化するための仕組みという意味合いが強い。

一方、社内外のデータを統合するプライベートDMPは、ブランドのターゲットをより正確に理解するための仕組みである。広告はオーディエンスに対するアクションの一部であることを踏まえると、プライベートDMPは広告代理店や広告宣伝担当者向けのものではなく、データ指向でマーケティングキャンペーンを運用したいと考える事業会社のマーケティング担当者のためのデータマネジメント環境と考えたほうがよいだろう。

DMP導入にあたって注目すべき「改正個人情報保護法」

DMPを利用する企業が最も気になるのは、サードパーティー・データのプライバシーやセキュリティが担保されているかどうかである。この点に配慮したDMPの導入にあたり、見過ごすことのできないのが改正個人情報保護法の動向である。2015年9月3日、衆院本会議で同法案が可決・成立し、2年以内に施行開始となる見通しである。

法改正の目玉の1つは、「匿名加工情報」の流通が可能になることである。匿名加工情報とは、「特定の個人を識別すること及びその作成に用いる個人情報を復元することができないように個人情報を加工したもの」を指す。現行法では個人情報を第三者に提供する際は、利用目的を特定し、本人の同意を得ることが原則である。しかし、本人の同意を得ることは、データ活用を積極的に行いたい事業者にとっては大きな負担になる。そこで、個人情報とは異なる「匿名加工情報」という新しいパーソナルデータの区分が定義され、データ活用への道筋がついた。

その一方で、企業はこれまで以上の保護の強化とデータの有効活用という難しいかじ取りを迫られる。匿名加工情報を活用する領域として真っ先に考えられるのは、新規顧客開拓の業務であり、すでに自社で保有している既存顧客のデータ以外の詳細なデータを入手したいと思うはずだ。

個人情報・プライバシーの保護とビッグデータ有効活用の両立は、今や日本だけでなく世界的な課題である。サードパーティー・データを提供する事業者でグローバル展開している場合は、特にこの2つのバランスに腐心している。簡単ではないが、プライベートDMP導入を希望する企業は、自社の匿名加工情報に関する運用ポリシーの整備を行わなくてはならない。また、自社に必要なデータの種類や利用目的を明確にすることが求められる。