介護保険が2000年に施行されてから現在15年の月日が流れました。介護保険は基本的に1割負担(所得に応じて2割負担)で介護サービスを受けることができる為、高齢者の方や介護が必要な方にとっては大変役に立つ制度として確立されています。今回はこの介護保険と世帯分離の関係について話をしていきたいと思います。


事例でみる世帯分離


A子さん親子の場合
A子さんは現在会社勤めをしています。A子さんの母親は現在特別養護老人ホームに入所中です。

A子さんの母親は現在介護保険で要介護5の認定を受けているため、約35万円分の介護保険サービスを受けており、1割負担となる3万5000円を自己負担しているのです。

施設入所にかかる費用はこの介護サービス費以外にも居室代・食事代・おむつ代等を合わせると10万程になります。これに先ほどの介護サービス費をプラスすると月々13万5000円程の費用が発生する訳です。

もちろん、母親の国民年金だけでは到底足りないため、不足分をA子さん自身が負担しているのです。

B子さん親子の場合
B子さんの母親はA子さんの母親と同様に特養に入所している要介護5の状態です。B子さんも会社勤めをしています。

がしかし、A子さん親子との違いは介護保険の負担額。B子さんの母親も介護保険サービスは35万まで利用でき、通常であればA子さん親子と同様の3万5000円が自己負担額になるのですが、B子さんの母親は1万5000円の自己負担

しかも、施設費も居室代・食事代・おむつ代などを合わせても4万程度に収まっているのです。これに介護サービス費をプラスしても合計で5万5000円程度です。A子さん親子との差額はなんと8万円程度にもなるのです。


A子さん親子とB子さん親子の負担額の違いとは?


ではなぜ、この2つの家族でこうも介護保険の負担額に違いが生じているのか?

それが、今回説明する”世帯分離”によるものなのです。

A子さん親子の場合は、母親とA子さんの所得が同一世帯になっている為、所得に応じて変化する高額介護サービス費が第4段階になっているのです。

それに対して、B子さん親子は、世帯分離をしている為、B子さんと母親の所得は別とみなされ、純粋に母親の所得で高額介護サービス費の負担段階が決まるのです。年間に約78万程度しかない母親の所得だと高額介護サービス費の自己負担限度額は第2段階の1万5000円となるので、上記のようにA子さん親子よりもB子さん親子の方が介護保険の負担額が安くなるわけです。


世帯分離は住民票一つで行うことができる


普通に考えれば同じ住所に暮らす家族は同一の世帯員として住民票に記載されるのですが、子どもの結婚や家計を分けて暮らすようになった場合に世帯分離をすることは可能なのです。

上記の例で言うならば、B子さんは母親が施設へ入所する際に世帯分離をした為に高額介護サービス費の限度額が第2段階になることができたのです。この2つの家族を見た時に、同じ条件である家族が住民票1つでこうも負担額が変わってくることに不平等さを感じてしまいます。

本来生活の実態に合わせて住民票とは移すべきものである為「介護保険の負担を安くしたい」という理由で世帯分離をすることは本来の目的とは異なる為、自治体では受け付けていないところもあるのです。


まとめ
このように同一世帯に住んではいるけれど、世帯分離をするか・しないかでこうも介護保険の費用負担に差額が出てしまうのです。知識を知っているか知らないかでこういった負担額の差異が生じてしまう今の現状に懸念を抱いてしまうのは私だけでしょうか。(執筆者:西村 馨)