新潟大学はこのほど、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟で2カ月間飼育したメダカの遺伝子を解析した結果、地上のメダカと比べて発現が大きく変化する遺伝子が複数見つかったと発表した。

同研究成果は同大学大学院医歯学総合研究科の寺井崇二 教授らの共同研究グループによるもので、10月1日に米科学誌「PLOS ONE」に掲載された。

今回の研究では、2012年に実施された宇宙飼育実験で用いられたメダカの6種類の臓器(脳、眼、肝臓、腸、精巣、卵巣)の遺伝子を解析した。その結果、宇宙飼育下では成熟までの期間、生殖行動や繁殖には大きな影響は見られなかったが、腸と精巣・卵巣では遺伝子の発現が大きく変化していた。一方、眼や脳では遺伝子の働き方の変化が少ないことがわかったほか、宇宙飼育により多くの臓器に共通して発現が変化する遺伝子が10個発見された。この中にはヒトにおいて免疫や酸化ストレスに関わる遺伝子も含まれていることから、メダカとヒトが宇宙環境に適応する際のストレス応答の共通性を示唆する結果となった。

今後、宇宙で生まれたメダカを用いた遺伝子解析研究や、それらが地上に帰還後にその子孫へ何らかの遺伝的影響が生じるのかを検証する実験も計画されており、こうした実験を通じて宇宙環境が生物にどのような生理的ストレスを与え、生物の体がどう反応するのかを解明することで、宇宙飛行士が長期間にわたって健康に宇宙滞在できる技術の実現につながると考えられている。

宇宙環境55日目のメダカと化学固定サンプルの組織切片