社内の業務効率化を目的として導入されるツールの一つに「社内SNS」がある。会社で利用している人も多いのではないだろうか。

実は社内SNSの歴史は古く、企業が導入し始めたのは2005年頃からだ。ただし、当時は業務効率化ではなく、社員同士の交流を活性化する意図で、福利厚生の一貫として位置づけられることが多かった。

その概念を大きく変えた立役者ともいえるのが、2011年に登場した「Talknote」だろう。今や1万5,000社 (2015年9月時点)の企業が登録・利用する同ツールは、一般のSNSと同じく全員へ一斉に情報共有できる「タイムライン」や、プロジェクトや部署などのグループ内に情報共有できる「グループ」、チャット感覚で個人宛にも複数人宛にも連絡できる「メッセージ」などの機能を搭載。ユーザーは、従来のメールと比較し、情報管理を安易に行うことができる。

昨今では、同ツール以外にも多くの社内SNSがある。競争の激しい同業界で、どのようにその認知を拡大し、登録企業を増やしていったのか ―― これまでの戦略を明らかにするべくトークノート 代表取締役の小池温男氏に話を伺った。

トークノート 代表取締役 小池温男氏

使いやすい、だから導入数が増える

―― どのような業界・業種の企業がTalknoteを利用していますか?

小池氏 : 業種や組織規模はさまざまですが、最も多い業種はIT/通信系で、次に飲食、その次が小売となります。非IT系の企業が8割くらいです。

リリース当初から、"誰でも簡単に使える、限りなくシンプルなデザイン"を目指してプロダクトを作り込んできました。これまでは「社内で利用するシステムは難しく、アナログな会社ではなかなかうまく使いこなせない」というのが普通のことだったと思います。ですが、そういうサービスではダメだと。

たとえば、SNSやチャットアプリ、ソーシャルゲームなど、コンシューマー向けのサービスには使いやすいものが多いと思いませんか? これらのサービスは、誰からも使用を強制されないんですよ。だから、ユーザーを楽しませないと使い続けてもらうことができないし、使いづらいなんていうのは論外。そのため、必然的に厳しい競争の中で磨かれ、ますます使いやすくなるんです。

Talknoteはこれに習い、常に「八百屋のおじさんでも使えるか」ということをイメージしながら開発してきました。非ITの企業にも多く使っていただけている理由は、ここにあると自負しています。

圧倒的な使いやすさを目指し、最小限の機能でリリース

―― リリース直後は、どのようにしてサービスの利用者を増やしていきましたか?

人気のコンシューマ向けサービスが"どのように広がっていったのか"を考え、同じことをやりました。

たとえばFacebookは、マーク・ザッカーバーグ氏がハーバード大学在学中、友人に使ってもらったことから学内に広まったものを他大学でも使えるようにして、どんどん利用者を増やしていきました。mixiも社員から社員の友達へ……という形で広がっていきました。

僕自身も当初、周りの経営者仲間10人に無料プランを見せて、使ってみてくださいとお願いしました。友達ですら使わないサービスならば、まず上手くいかないだろうと。本当に良いサービスであれば、その人が他のユーザーを連れてきて、どんどん拡散していくはずだと確信していたんです。結果的には、シビアな面々から「かなり良い」「これがあればメールはいらないかも」など好感触を得られました。

―― 初期の頃から完成度が高かったんですね。

人も資金も限りなく少ない状況でしたから、多くの機能を実装し、それらをすべて使いやすく開発することはできません。まずは、使いやすいものを完璧に作ることに注力し、「グループでリアルタイムチャットができる」機能のみにフォーカスしました。

当時はスマホが普及しておらず、ガラケー率が90%を超えていました。外出先で社員にメールを送るときも、ガラケーを使うのが当たり前の時代。でも、複数人に一斉送信でメールを送りたくても、送信先は最大5件と制限されていたんです。ビジネスシーンにおいて、一斉送信が5人までというのは、あまりにも少ない数字ですよね。

初期の開発時にグループでリアルタイムチャットができる機能に絞った理由は、こういった要望もありましたし、「同時に5名以上に送れる」ということは大きなバリューになると思ったわけです。

「Talknote」公式Webサイト イメージ

有料プラン転向企業が増えず苦戦した時期も

―― 最初の10人が使用したあと、利用企業数はどのように推移していきましたか?

1年後の2012年6月には2,000社を超え、同年末には3,000社、翌年2013年10月には1万社を突破しました。利用社数はありがたいことに順調に推移していましたが、2013年1月に有料プランをリリースし直すなど、いくつかの重要な分岐点があったように思います。

Talknoteはリリース当初、「無料プランのみでスタートし、登録企業の母数が増えたタイミングで有料プランの提供を開始。ヘビーに利用したいという一部のユーザーに課金してもらう」という筋書きを考えていました。食べログやクックパッドなどのコンシューマー向けサービスの収益化と同じ「フリーミアム」と呼ばれる提供方法を採用したわけです。

しかし、最初に有料版をリリースしたとき、課金してくれるユーザーがほとんど現れなかった。無料プランで十分事足りるので、あえて有料プランにする必要はない、と感じるユーザーが多かったんでしょう。当時は管理者向けのごく一部の機能だけを有料にしていましたから。

そうこうしていると資金が尽きそうになり、何とか課金してもらえる価値のあるものにしなければと、原則無料ではなく、「無料版ではヘビーに使うことはできない、有料版ならヘビーに使うことができる」という形式へ基本思想を転換しました。

変更前に登録企業さまへその旨を伝えると、「仕方ないね」「有料プランにしますよ」と言ってくださるところが多く、安心して大きく方向転換できたのを覚えています。

"仕込みの口コミ"に効果は期待できない

―― 登録企業が爆発的に増えた前後で、マーケティング手法はどう変わっていきましたか?

今も変わりませんが、リリース時から本音ベースの口コミを大事にしていました。有名ブロガーなどにお金を払って書いてもらう口コミは過去の経験上、全然効果を生みません。読み手は「これは本音じゃないな」「書かされているな」と直感的にわかります。

2012年頃、大きな学びが一つありました。影響力のある著名人数名が「Talknoteは本当に良い」「これがないと会社は回らない」など、ブログやSNSなどで発信してくれたことがあったんです。もちろん僕らからお願いしたわけではなく、自主的に書いてくれたものです。

アクセス解析をすると、彼らの投稿経由で来たユーザーがサービスの利用に至っている確率が圧倒的に多く、であれば、もっと多くの人にこの「Talknoteを絶賛するユーザーの声」を見てもらおうと、そういったブログやTwitterでの投稿を広告化しました。自社で編集した事例記事ではなく、リアルなユーザーの声をその状態のまま広告化したわけです。

僕は、良い口コミをしてもらえないサービスはいくら広告を出してもペイすることはないと考えています。一方で、口コミだけでも広がるサービスは、広告を出すことでより多くのユーザーに広げることができると確信しています。

また、求人などニーズが顕在化し、自ら検索して情報にアクセスするものと違い、「社内コミュニケーションを良くする」ということについて、ほとんどの経営者は潜在的にニーズを感じているものの、そのニーズが顕在化し「社内コミュニケーション 改善」「社内SNS」などと検索することはほとんどありません。したがって、リスティング広告などは効果があまりありません。

潜在ニーズにリーチするにはどうすれば良いかということを考えた結果、多くのユーザーが登録し、経営者が実名で利用しているFacebookに目をつけました。Facebookのタイムラインなら潜在ニーズにリーチできると考えたからです。また、同様のタイムライン広告ではTwitterもありますが、Talknoteの場合はFacebookの方が比較的に効果が高いように思いました。

リリース当初から「口コミが大事」だと、口コミを生むには「顧客を魅了するしかない」と言い続けていますので、今後も本質的にサービスをより良くしていくこと第一に考え、より多くの企業に使っていただけるサービスにしていきたいと思っています。