子どもたちの「将来の夢ランキング」。かつては1位が当たり前だったプロ野球選手という職業も、最近はサッカー選手に1位の座を明け渡すことも多くなってきた。だが、「年俸」に目を向ければ、やはりまだまだプロ野球が日本のスポーツシーンではもっとも夢のある職業だ。

J1リーグの平均年俸(約2,000万円)に対して、プロ野球のそれは約3,800万円(※外国人選手は除く)と倍近い。それだけの高給取りだからこそ、われわれファンは選手に夢を抱くし、ふがいないプレーをすれば罵声のひとつも浴びせたくなってしまう。

そんな「お金」の視点から、今季のプロ野球を振り返ってみようというのが「プロ野球コスパランキング」。本稿では、各球団の総年俸と今季ここまでの勝利数を見比べていくことで、コストパフォーマンスがよい球団・悪い球団はどこなのかを探っていく(年俸はすべて推定。成績は8月31日現在で集計)。

《12球団別・1勝の値段ランキング》
球団   総年俸   勝数  1勝の値段
1 日  23億4395万円 68勝 3,446万9,853円
2 横  22億6610万円 54勝 4,196万4,815円
3 西  24億5620万円 57勝 4,309万1,228円
4 ロ  24億5155万円 55勝 4,457万3,636円
5 ヤ  27億3780万円 61勝 4,488万1,967円
6 広  25億7341万円 55勝 4,678万9,273円
7 中  25億5247万円 53勝 4,815万9,811円
8 楽  23億6890万円 47勝 5,040万2,128円
9 神  33億4720万円 61勝 5,487万2,131円
10 ソ 47億1940万円 74勝 6,377万5,676円
11 巨 46億5430万円 62勝 7,506万9,355円
12 オ 38億3895万円 48勝 7,997万8,125円

(日=日本ハム、横=DeNA、西=西武、ロ=ロッテ、ヤ=ヤクルト、広=広島、中=中日、楽=楽天、神=阪神、ソ=ソフトバンク、巨=巨人、オ=オリックス)

日本ハムのコスパがよい理由

今季、ここまででもっともコストパフォーマンスがよい球団は、北海道日本ハムファイターズ。1勝あたりの選手年俸は約3,500万円で、2位以下を大きく引き離し、唯一の3,000万円台を記録した。

中畑清監督の続投要請は早すぎた?

総年俸額がDeNAに次ぐ2番目の“安さ”を誇る日本ハム。ペナント順位はパ・リーグ2位、8月上旬にソフトバンクに3連敗を喫して以降は負け越しカードがないという安定感が強みだ。CS出場もほぼ間違いなく、栗山英樹監督の来季続投が早くも決定的になっている。

日本ハムの総年俸が安い一番の理由は、12球団イチの平均年齢の若さに尽きるだろう。昨オフ、稲葉篤紀と金子誠という大ベテラン2人が引退したのに加えて、大引啓次と小谷野栄一がFA移籍。また、ドラフトで高卒選手を積極的に獲得している点も「ヤング日本ハム」の大きな要因といえる。

日本ハムといえば、2004年の北海道移転を契機に、先進的な「ベースボール・オペレーション・システム」を採用。選手を多角的な視点から評価していることで有名だ。このシステム構築には1億円もの費用がかかったと言われているが、北海道移転後の10年でリーグ優勝4回、日本一1回と結果になって表れているのが素晴らしい。「最高のコストパフォーマンスの影には、1億円の先行投資があった」と見ることもできるだろう。

ちなみに、今季前半戦だけで見ていけば、総年俸が"12球団最安"のDeNAも日本ハムのコスパのよさといい勝負だった。ところが、7月末から4連敗以上を何度も繰り返し、ついには先週、前半戦首位ターンチームが最下位に転落するという、史上初の珍事も発生してしまった。7月に発表された中畑清監督への来季続投要請は早すぎたのかもしれない。

「あと1勝」のための15億円が……

では、コスパの悪い球団も見ていこう。1勝あたりの金額がずぬけて高いのは、セが巨人で約7,500万円、そしてパがオリックスで約8,000万円。巨人の金満体質は今に始まったことではないのだから、やはりここではオリックスに注目したい。

シーズン途中で休養したオリックス・森脇浩司監督

振り返れば今季開幕前、パの話題を独占していたのは大型補強を敢行したオリックスだった。FAで日本ハムから小谷野栄一を、アメリカ帰りの中島裕之を獲得し、さらにはDeNAからトニ・ブランコ、広島からブライアン・バリントンが移籍。加えて、アメリカ挑戦もうわさされた金子千尋の残留にも成功し、総年俸は2014年に比べてなんと15億円近くアップした。

昨季、優勝したソフトバンクとはゲーム差なしの2位に甘んじたオリックス。つまりは、あと1勝をもぎとるための15億円だったはず。ところが、フタを開けてみれば上述した選手たちに加えて、従来のレギュラー陣にも負傷が相次ぎ、まともなスタメンを組めたのは数えるほど。開幕から最下位が定位置になり、6月2日には森脇浩司監督の休養&福良淳一監督代行就任という緊急事態に陥った。

非情な森脇降ろしが功を奏したのか、夏場以降、少しずつ勝利を積み重ねたオリックス。8月25日には今季113試合目で初めて最下位を脱出した。ここからコストパフォーマンスを上げていけるか……と思ったのもつかの間、森脇監督の正式退任が(今さら)発表された同27日から4連敗を喫し、またもや最下位に逆戻りしてしまった。

既に自力でのCS出場の可能性もなくなっているだけに、今オフの厳冬更改は待ったなしだ。だが、責任は選手・監督だけにあるわけではない。

《どんな戦いでも武だけでは勝てない。「文武を兼ね備えてこそ無敵」なのである》

かつて、こんな言葉を残したのは希代の名将・野村克也。「文」とは選手の知性や監督の戦術であると同時に、「フロント力」とも言い換えることができるはずだ。真に反省し、責任を負うべきは誰なのかを、今一度検証する必要があるだろう。

週刊野球太郎

スマホマガジン『週刊野球太郎』は、『プロ野球コスパランキング』を掲載中! プロ野球選手の年俸を基に、本塁打数や勝利数の「値段」をランキング形式で発表。コストパフォーマンスの良い選手・悪い選手を徹底調査します!