中国の景気減速懸念などを受け、米国の金融政策の先行きにも不透明感が高まってきました。米国の景気回復など国内要因からは利上げが支持されるものの、外部要因は不透明となる中、今後の動向のポイントを整理します。

米国4-6月期GDP:市場予想を上回る前期比年率3.7%増へと上方修正

米商務省が2015年8月27日に発表した4-6月期実質GDP(国内総生産)改定値は前期比年率3.7%増と、7月に発表された速報値(同2.3%増)から上方修正されました。市場では同3.2%増程度への修正が見込まれていました。

プラスに寄与した主な項目は企業投資などで、例えば知的財産投資は同8.6%増と大幅な伸びとなっています。

どこに注目すべきか:4-6月期GDP、ダドリー発言、賃金上昇率

中国の景気減速懸念などを背景に株式市場の変動が高まったこと(図表1参照)などを受け、米国の金融政策の先行きにも不透明感が高まってきました。米国の4-6月期GDPは市場予想を上回る改善を示すなど米国内要因の多くは利上げを示唆するものの、外部要因は不透明となる中、今後の動向を占ううえでのポイントを整理します。

図表1:米国株式市場(S&P500種指数)の推移(日次、期間:2015年1月2日~2015年8月27日)

出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

まず、4-6月期GDPは比較的好調で、年後半の米国景気の堅調さを期待させる項目も見られます。例えば、回復が鈍かった非住宅固定投資(設備投資や知的財産投資)が上方修正されたことです。また、在庫投資の成長寄与度が+0.2%にとどまったことで、今後在庫取り崩しの減少、生産の増加を期待させる内容です。ただし貿易収支の改善は小幅など気になる点もあり(過去データである)4-6月期GDPの改善だけで利上げ開始時期の決定要因となるには不十分と思われます。

より注目したいのは、足元の環境や今後の見通しを踏まえた上での当局の姿勢と、7-9月期の以降の米国景気を示唆する経済データを重視しています。

例えば、当局の発言では、8月26日のダドリー・ニューヨーク連銀総裁の9月利上げの根拠が数週間前ほどには強固でなくなったというコメントなどを重視しています。ダドリー氏の発言は今後数ヵ月以上先の見通しに影響を与える要因を考慮しての内容と思われます。また、9月利上げを積極的に支持していたアトランタ地区連銀ロックハート総裁も9月の利上げ開始について若干トーンダウンしている模様です。

最後に今後のイベントの注目点ですが(図表2参照)、9月16~17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、ジャクソンホールでのフィッシャー米連邦準備制度理事会(FRB)副議長の発言に注目しています。一方、経済指標では、雇用統計のひとつである賃金上昇率の回復ペースに注目しています。また、図表2に示した、7-9月GDP推定の主要構成項目で9月のFOMC前に公表される主なデータは順調ではあるものの、現段階では、市場は大幅な改善を想定していない模様です。

図表2:金融政策への影響が想定される主なイベント

出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成

9月の利上げ開始の可能性は今後のデータにより残されてはいるものの、バランスの取れた発言で注目されるダドリー総裁のコメントは重みもあり、従来どおり年内利上げの見方を維持するものの、9月の可能性は低下したと見ています。

●ピクテ投信投資顧問が提供する、「今日のヘッドライン」からの転載です。