東京都・両国の江戸東京博物館は、幕末から明治にかけての浮世絵と写真に焦点をあてた特別展「浮世絵から写真へー視覚の文明開化ー」を開催する。会期は10月10日~12月6日(月曜休館、ただし月曜日が祝日または振替休日の場合は翌日休館)。開館時間は9:30~17:30(土曜は19:30まで)。観覧料は一般1,350円、大学・専門学校生1,080円、小中高校生・65歳以上680円。

横山松三郎「丁髷の男と外国人」写真油絵・コラージュ 1882年(明治15)頃 個人蔵

「和装西洋男女図」 絹本彩色 19世紀末(明治前期) 江戸東京博物館蔵

小川一眞「凌雲閣百美人」小と代 写真(鶏卵紙に彩色) 1891年(明治24) 江戸東京博物館蔵

同展は、浮世絵をはじめとする絵と、幕末期に渡来した写真が、幕末から明治にかけて織りなした多彩な表現を紹介し、日本文化の近代化の一面を明らかにする特別展。幕末から明治の浮世絵からは、当時の人々が写真に深い関心を寄せていたことがわかり、また写真においても、浮世絵をはじめとする絵からさまざまな着想を得ている様子がうかがえる。幕末から明治にかけて、絵や写真はそれぞれの枠を超えて、両者が大胆にからみあった実に面白い作品を生み出してきた。

歌川国貞(3代豊国)「東都両国川開之図」 錦絵3枚続 1856年(安政3) 江戸東京博物館蔵 前期展示

「東京名所写真帖」 写真(鶏卵紙に彩色) 19世紀末(明治前期) 江戸東京博物館蔵 前期展示(後期は別の頁を展示)

同展では、江戸時代の浮世絵と写真の接点に注目。江戸時代に制作されたカラフルな浮世絵や、版本の挿絵にそっくりな明治初期のモノクロ風景写真や、浅草の凌雲閣で展示した百人の美女の写真を貼り込んだアルバム「凌雲閣百美人」が展示され、江戸時代の浮世絵と新技術の写真の意外な共通点を浮かび上がらせる。また、明治時代、写真を参考にその人物そっくりな絵が描かれるようになった。浮世絵師の小林清親、日本画と洋画を描いた五姓田芳柳、そして写真師の江崎禮二ら、当時の代表的な作り手たちの作品を例にあげながら、写真そっくりな不思議な絵の数々が紹介される。そのほか、現在では見ることができない写真油絵という緻密な作業を伴う技法が紹介される。横山松三郎によって明治13年頃考案され、弟子の小豆澤亮一に伝授されたこの技法は、鮮やかな色彩と艶のある画面を持つ類するものがない技法で、天覧の栄誉に浴したが、明治23年の小豆澤の死去とともに忘れ去られ、幻の技法となった。

なお、前期展示は10月10日~11月8日、後期展示は11月10日~12月6日となり、展示作品の一部入れ替えが行われる。また、1週間ごと、2週間ごとにページ替えをする作品もある。