マネーフォワードは8月25日に、「Finance」と「Technology」をかけあわせた金融サービス「Fintech」事業領域の新技術・新サービスの開発を共同して推進していくことを目的として、住信SBIネット銀行と静岡銀行と業務提携契約を締結した。また、SBIベネフィット・システムズとも確定拠出年金領域の新サービス開発を共同で推進していくことを目的とした業務提携契約を締結。

さらに、これらの業務提携に伴い、住信SBIネット銀行およびSBIベネフィット・システムズをグループ傘下に擁するSBIホールディングスと静岡銀行、既存株主のジャフコより総額約10億円の資金調達を実施することを発表した。

当日は記者発表会が開かれ、マネーフォワード 代表取締役社長CEO 辻庸介氏、SBIホールディングス 代表取締役執行役員社長 北尾吉孝氏、住信SBIネット銀行 代表取締役社長 円山法昭氏が会見を行った。

左から、SBIホールディングス 代表取締役執行役員社長 北尾吉孝氏、マネーフォワード 代表取締役社長CEO 辻庸介氏、住信SBIネット銀行 代表取締役社長 円山法昭氏

「Fintech」事業領域での競争力強化を目的とした業務提携

マネーフォワードではこれまで、個人向けには自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」を、中小企業、個人事業主向けにはクラウドサービス「MFクラウド」シリーズを提供してきた。

同社は、住信SBIネット銀行との提携内容について、以下の3点を挙げた。

  • 住信SBIネット銀行向け自動家計簿サービスの提供
  • 住信SBIネット銀行提供の接続APIを用いた公式連携
  • 「MFクラウド」を活用した金融サービスの共同検討

マネーフォワード 代表取締役社長CEO 辻庸介氏

API連携について、マネーフォワードの辻氏は、「銀行の公式APIの提供は日本国内に限らず、世界的に見ても先進的な取り組み」と述べた。API連携することによって、銀行が保有している顧客の資産残高情報や入出金履歴情報を、銀行外のサービスで利用できるようなサービスを提供することができるという。

住信SBIネット銀行向け自動家計簿サービスについては、今年の11月をめどに提供を開始する予定だと発表があった。そのほかのサービスについては、詳細は未定とされた。

今回のSBIホールディングスとの提携に関して辻氏は、「SBIホールディングスはFintechの元祖。各方面にサービス提供していて、学ぶことが多い。高いハードルをスピード感を持って突破していけるパートナーだと感じる」と語った。

マネーフォワードと静岡銀行との提携内容については、次の3点が挙げられた。

  • 両社の経営資源を活用した中小企業、個人事業主を対象とした新たなFintechサービスの共同開発
  • 個人顧客向けPFM(Personal Financial Management)サービスの共同開発
  • 静岡銀行の業務エリアにおける「MFクラウド」サービス展開支援

SBIベネフィット・システムズとは、企業・個人の確定拠出年金の加入促進と市場活性化を目指すとした。両社は、確定拠出年金領域(401k)における新技術・新サービスの共同開発に取り組んでいくという。

今後の事業戦略

マネーフォワードは今後の事業戦略として、MFクラウド事業では、「会社のお金の流れを見える化」することを掲げている。

「自動取得やAIによる自動仕訳など、作業の効率化を目指すとともに、Airレジやインフォマートなど、他業種との連携を強化し、データを集約できるようにしていきたい」(辻氏)

同社では、10月には「MFクラウドマイナンバー」の正式リリースを、今秋として「MFクラウド経費」のリリースを予定しているという。辻氏は「マイナンバーとクラウドは相性がいい」と述べ、マイナンバー収集をオンラインで完結できる仕組みを開発しているとした。

PMF事業の戦略については、金融機関との連携拡大を掲げた。具体例として、今回のような公式API連携や、大手金融SIベンダーとのAPI連携プロジェクトが挙げられた。

「Open Bank APIによって、銀行自身がプラットフォームとなる仕組みを構築できる。他業種だと、FacebookやAmazon、決済サービスを展開するSquareなどが挙げられる。英国財務省では、銀行のAPI活用促進が優先的なアジェンダとして挙げられている。これにより、リアルタイムのデータ連携によるユーザビリティの向上が見込め、住宅ローンの借り換えなどお金に関する未来の課題を解決するソリューションとなることを目指したい」(辻氏)

SBIホールディングス 代表取締役執行役員社長 北尾吉孝氏

SBIホールディングスの北尾氏は、今後の戦略として"W Fintech(ダブル フィンテック)"というワードを掲げた。

「SBIホールディングスではこれまで、SBI証券、住信SBIネット銀行、SBI損保、SBI生命など、創業16年で世界初のネット金融を中心とした金融コングロマリットを確立し、グループ内のシナジー効果を徹底的に追求してきた。今後は、SBIグループ内の"Fintech"と外部の専門的"Fintech"企業との連携を通じて、さらに顧客利便性を高める"W Fintech"を進めていきたい。また、これまでは法人に対しての貸出を行っていないため、MFクラウドを提供するマネーフォワードと連携することによって、新しい事業領域を模索したい」(北尾氏)

"W Fintech"戦略イメージ

また、同社ではアジアを中心として各国に出資先金融機関があるため、今後はマネーフォワードの海外戦略に関しても協力していく構えだ。

SBIグループの海外出資先金融機関

住信SBIネット銀行 代表取締役社長 円山法昭氏

住信SBIネット銀行の丸山氏からは、「まずは11月に銀行としては初となる専用アプリをリリースし、その後に法人向けサービスを展開していきたい。具体的には、法人開業支援サービスや融資、ビジネスカードなど、個人事業主や中小企業に必要な金融サービスを提供していくことを検討していきたい」と述べた。