美術館でのアート鑑賞は、慌ただしい日常から離れ、インスピレーションを受けたり、リフレッシュをするのにはぴったりの過ごし方。ですが、ゆったりしたイメージとは裏腹によく歩き回ることになるので、見終わった頃には少し疲れてしまったという覚えがあるのでは?

そんなとき、頼りになるのが美術館併設・あるいは近隣のカフェ。建物に歴史があったり、そこならではのメニューがあったりと、疲れを癒やすのみならず、見所も多いものです。

「絵の音」を感じる展示会を開催

今回ご紹介するのは、東京都・南青山にある根津美術館のカフェ「NEZUCAFÉ」。根津美術館は、実業家・初代根津嘉一郎がその地形を気に入って住んでいた青山の地にあります。

初代の死後、その遺言に従った二代目によって、日本と東洋の古美術コレクションを保存・展示するためにつくられました。表参道駅から徒歩8分という都心にありながらも落ち着いた佇まいの同館には1万7000平方メートルの広さをもつ日本庭園もあり、ゆったりとした休日のひとときを過ごすことができそうです。

隈研吾設計で2009年に建てられた現在の根津美術館 (C)藤塚光政

7月30日から開催されるのは、コレクション展 「絵の音を聴く ―雨と風、鳥のさえずり、人の声―」です(会期:9月6日まで)。この展示には、小鳥の声や風・雲の轟音、滝の音、群衆の賑わいなど、「音」を感じることができるような絵画作品が集められました。

展示作品のひとつ、江戸琳派の名作「夏秋渓流図屏風」(鈴木其一筆 6曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 19世紀 同館蔵)にはセミの姿が隠されており、水の流れと合わせて音を想像することができます。どんな音がするのかを話したり、ひとり静かに音を感じたりしながら鑑賞するのがおすすめだそうです。

夏秋渓流図屏風 鈴木其一筆 6曲1双(右隻) 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵

龍虎図屏風 雪村周継筆 6曲1双(左隻) 日本・室町時代 16世紀 根津美術館蔵

3種のシャーベットで喉を潤す

そんな根津美術館の庭園内にあるカフェ「NEZUCAFÉ」は、壁面の大部分をガラスが占めており、ガラス越しに緑を眺めながら軽食やティータイムを楽しむことができるカフェです。庭園の木々には常緑樹が多く、また紅葉や梅など季節ごとの移り変わりも感じることができます。

自然光がやわらかに降り注ぐ「NEZUCAFÉ」

カウンター席からは庭園を一望できる。一人でゆったりと過ごすこともできそうだ

自然光が取り入れられたこのカフェで最も人気なのが、庭園を一望できるカウンター席。神戸牛を使ったミートパイ、日替わりパスタなど軽食のほか、オリジナルブレンドのコーヒーや紅茶、デザートなどを味わうことができます。

こちらのカフェでは、年7回の展覧会に合わせてオリジナルスイーツを提供しており、今回は「トリオ・デュ・フリュイ」(750円、プラス400円で好きなドリンクをつけられる)が提供されます。白桃、カシス、ゆずのシャーベットを組み合わせて、味わいの変化を楽しめるようにしたものです。さっぱりとした口当たりで爽やかな果物の香りが広がります。

「トリオ・デュ・フリュイ」には、バウムクーヘンが添えられている

NEZUCAFÉ店長は「白桃で夏を感じ、カシスの赤みで色合いを眺め、ゆずを味わいながら『来てよかった』と振り返っていただく。音だけではなく味覚も感じていただければうれしいです」とのこと。

展覧会を見た後は庭園散策をしてカフェでひと休み、という楽しみ方もできる同美術館。庭園に出やすいため、子供連れでも気楽に利用しやすいそうです。都会の喧騒を逃れて「絵の音」に耳を澄まし、シャーベットを食べながら涼やかな時間を過ごすという夏の休日はいかがでしょうか。