消費電力測定(グラフ129~131)

最後に消費電力について。こちらも同じように待機時の消費電力、それと3DMark FireStrikeのデモ実施時の消費電力を測定してみた。グラフ129が実効消費電力、グラフ130が待機電力との差である。

グラフ130の数字は、各グラフィックカードの消費電力に加えて、フル駆動しているCore i7-4790Kの消費電力増分やメモリの消費電力も含んだ数字だが、これが100Wを超えたりすることは無い(大ざっぱには50W位に思える)ということで、ご了解いただきたい。

さて、それはともかくとして分かる事は

  • R9 Fury XとGTX 980 Tiは同程度。
  • R9 FuryはGTX 980よりはだいぶ多い。というか、R9 Fury Xよりやや少ない程度。
  • GTX 980 TiやGTX 780 Ti、R9 290XはThermal Throttlingにより途中で動作周波数が絞られる(GTX 980にはその気配もない)が、液冷のR9 Fury Xはともかく空冷のR9 Furyもまったく動作周波数が落ちる気配も無い。

というあたりだ。これをまとめたのがグラフ131である。R9 290XとかGeForce GTX 980 Tiなどは最大で260W以上になるが、Thermal Throttlingで途中から動作周波数を下げられており、これで平均消費電力はずっと少なくなっている。逆にGTX 980とかR9 Fury/Fury Xはほぼフルスピードで動き続けているのため、最大消費電力と平均消費電力の差がずっと小さくなっている。

ここから見る限り、R9 Fury/Fury Xの8pin×2は本当にピーク時の供給対策であって、普通に使う分にはGeForce GTX 780 Ti/980 Tiと大差ないということだ。加えて冷却能力は非常に高いともいえる。もっともその代償が巨大なカードサイズ+3連ファン、あるいはどでかいラジエターとも言えるのだが。

まとめと考察

ということで考察である。R9 Fury/Fury Xの成績が振るわない理由は既にSandraの考察で記したのでここでは繰り返さない。ことゲームに関して言えば、R9 Fury XをGTX 980 Tiの競合と位置付けるのはちょっと難しいだろう。

また、R9 FuryがGTX 980に競合できるかといえば微妙なところだ。これは性能面というよりも価格面の影響が大きい。例えばAmazonで探すと玄人志向のGTX 980カードが6万円台前半で買えてしまう現状では、かなり厳しいと思う。

ただ、変な話であるがHBMという「夢」に+αを支払っても良いという人にはR9 Fury/Fury Xはそう悪いものではない。中間考察に改善策としてハードウェア的に手を加えれば何とかなるかもしれないという話を示したが、ドライバ側でも何かしらできる可能性もあるし、端的に言えばHBMの利用効率さえもう少しなんとかなれば性能がもっと上がることが期待できるからだ。確かに現状は少し厳しいところがあるのだが、こういうある種の夢を抱ける余地のある製品とはいえると思う。