Wi-Fi Allianceは7月14日、近接情報認識の新技術である「Wi-Fi Aware」について記者説明会を開催した。

Wi-Fi Alliance マーケティング担当VPのケリー・デイヴィス・フェルナー氏

現在、世界で65億人のモバイルユーザーと19億人のSNSアクティブユーザーがいるといわれている。時間軸とで見た場合、SNSでは「現在の近く」で起こっている出来事を知ることができるが、そこで重要となるのは発言の位置情報だ。

例えば、小売店やイベント会場、自治体が近接情報を活用することで、より多くの収益を上げ、価値を高められる。2019年には、433億ドルの利益をもたらすと予想されている。

近接情報の多くは、GPSやBluetoothビーコンなどの位置データ、あるいは「○○店にいる」というチェックイン情報を元にしている。GPSは屋内では使えないか、または精度が大幅に落ちるうえ、サーバー情報をベースとした「近くにいる人」の情報は、少々古くなりやすい。また、大規模なイベントでデータ通信が多く発生すると、サービスレベルが低下する問題もある。

19億人ものアクティブなSNSユーザーの価値を高めるためには、「近くの情報」が不可欠。現在はビーコンやGPS、チェックインなどが使われている

屋内ではGPSの精度が悪いうえ、サーバー経由の処理はリアルタイム性とネットワーク負荷に問題がある。これを解決するのがWi-Fi Awareだ

双方向の近接情報認識、新技術の「Wi-Fi Aware」

そこで「Wi-Fi Aware」だが、これはWi-Fi Allianceの「Neighbor Awareness Networking」テクノロジーにもとづいた新しい近接情報認識技術で、各端末はサービス名と固有値を含めた小さなデータを発する。このデータ(ハートビート)を受信することで、近くに同じサービスの共有を希望するユーザーがいると、端末だけで判断できる仕組みだ。

Wi-Fi Awareは、従来のBluetoothビーコンとは異なり、双方向でのデータのやり取りが可能であり、必要に応じてWi-Fi Directによる直接通信も行える。やや語弊はあるが、ニンテンドーDSの「すれちがい通信」を、多種のアプリケーションで使えるように標準化したようなものと思えばよいだろう。

Wi-Fi Awareを一言で表現したもの。ユーザーは「○○のサービスを受けたい」「共有したい」と定期的に外部へ発信し、意思を伝える

Wi-Fi Awareの特徴。小さなデータサイズの送信なので電力効率がよく、どこでも利用可能。そして必要に応じてWi-Fiによる高レートのデータ転送に切り替えられる

チップベンダーからの支持は得ており、モバイルOSのAPIサポートが普及への課題

フェルナー氏の説明によると、Wi-Fi Awareは、Wi-Fi Alliance内のチップベンダーから幅広い支持を受けている。すでに5社のベンダーが、対応チップを出荷しているという。

ただし、Wi-Fi Aware対応アプリを作成するためには、モバイルOSがWi-Fi Aware用のAPIを提供しなければならない。現時点で対応を公表しているOSベンダーはないものの、水面下では動いているようだ。質問に対して「来年には対応スマホが出るだろう。あるいはOSに組み込まれる前に、一部ベンダーの独自実装でエコスステムを作るかもしれない」と回答していた。

Wi-Fi認証によって、幅広い相手を対象に確認と通信を行える点が特徴

すでに5社からWi-Fi Aware対応チップが出荷されている

Wi-Fi Awareの認定機器は、おおむねWi-Fi Directの認定もとるはずなので、アクセスポイントなしでの通信が想定されている。現状はモバイルOS側のWi-Fi Awareサポートが見えていないが、来年には対応製品が出るだろうとのこと

Wi-Fi Awareについては、YouTubeで「Wi-Fi Aware: Discover the world nearby」という日本語の説明ビデオが公開されているので、参考にするとよいだろう。