「女って急に感情的になるし、意味不明で面倒」というのが男性の女性に対する認識だとすると、「男って単純だよね」というのが、女性の男性に対する認識ではないでしょうか。

もちろん、男性だからといって一概に単純とはいえないでしょう。男性自身からも「そんなに単純じゃない! 」という声が聞こえてきそうです。とはいえ、女性からすれば、男性が単純にみえるのも事実。どうして女性から男性は単純にみえてしまうのでしょうか。

本当に男性は、女性が思うように単純なのか

男性が女性に比べて単純だといえる研究は、見当たりませんが、男性を単純と考えている女性がいるのは事実。そこには、男性は女性よりも単純だというステレオタイプ(思い込み)が存在していると思います。

ところで、この「男性は単純」というステレオタイプに関して、イギリスのハートフォードシャー大学リチャード・ワイズマン教授が面白い研究をしています。その内容はというと、実験協力者の男女それぞれに、異性に向けて自己アピールを書かせました。そして、それぞれの自己アピールについて、どれだけの返事がくるかを実験協力者に判断させました。

すると、男性の実験協力者が書いた自己アピールについて、男性自身が女性から返事があると答えた割合、女性が返事をすると答えた割合、それぞれに大きな差は見られませんでした。しかしながら、女性の実験協力者が書いた自己アピールについては男女で大きな差が見られました。女性がこれなら男性から返事が来るだろうと考えていた自己アピールに、男性自身は返事をしないと答えたのです。つまり、女性が考えている男性の言動というのは、実際の男性たちの意図からは大きくずれていたといえるのではないでしょうか。

この実験結果からいえることは、女性たちが考える「男って○○なんでしょ」というのは、実は当たっていないということ。女性が考えている以上に、男性は複雑で理解できない存在なのです。

しかし、どうして男性は単純だと思われているのでしょうか。こと恋愛に関しては、若い女性が好き、胸やお尻の大きな女性が好きということがいわれますよね。これらは、繁殖という目的を達成するため、無意識にそういう選択をしているのかもしれません。つまり、男性の外見に対する嗜好はわかりやすいと。そのあたりが、女性からすれば「男って、単純だよね」と思わせているのかもしれません。

男性であろうが、女性であろうが、単純な人というのはいないわけです。もちろん、感情が表にでやすい人いうのはいるでしょう。ですが、単純だと決めつけて人間関係を続けていくと、いつか大変なことになるかもしれません。

* * * * *

著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理に詳しい。
現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は「化粧にみる日本文化」「黒髪と美女の日本史」(共に水曜社)など。