アドビシステムズは17日、同社の「Adobe Creative Cloud」の最新版である「Adobe Creative Cloud 2015年リリース」を解説する発表記念イベント「Adobe Live 2015」を都内にて開催した。本稿では、ゲストを招いての「ブレイクアウトセッション2」の様子をお届けする。

"過去最大のアップデート"ともうたわれる「Adobe Creative Cloud 2015年リリース」。4,000万点の写真やベクター画像、イラストをダイレクトに利用可能なストックサービス「Adobe Stock」の提供をはじめ、ファイルや写真、フォント、ベクター画像、ブラシ、色などのデータをシームレスに同期する「Adobe CreativeSync」や、これまでiOSで展開してきたモバイルアプリに、Android端末向けのものが各種追加されたのが主なトピックといえる。イベントには、クリエイティブの最前線で活躍するクリエイターがゲストスピーカーとして参加し、「Adobe Creative Cloud」最新版の魅力や活用事例などを語った。

そんな中で、「ブレイクアウトセッション2」のゲストとして登場したのが、デザイナーの鈴木淳平氏と、尾沢早飛氏。両氏は、「Adobe Creative Cloud」のクリイター事例として、公式ホームページにも登場している人物だ。

鈴木氏は、デザイン事務所「リッシ」で、広告を中心に、パッケージやウェブなどの企画・デザインに幅広く携わっている。最近では、サントリーの新商品「ラドラー」の販促物関連のデザインワークを手がけたことで知られる。また尾沢氏は、2008年にコーニーデザインを設立して独立し、広告、エディトリアル、CDジャケット、ウェブなどのアートディレクション、デザインを幅広く手掛けている。ブルーノート東京の広告物をはじめ、BLUE BOOKS cafeのトータルアートディレクションを担当している他、最近では、T.M.Revolutionの最新アルバムのジャケットワークやツアーグッズなどを制作したとのことだ。

まずは両名の実績についての紹介。画像は、尾沢氏が手がけたT.M.Revolutionの最新アルバムのジャケットワーク

CCになって便利になったこと

Creative Cloudをデザインワークに活用しているふたりから、「Creative Cloudになってよかったこと」が語られた。

鈴木氏は、「ライブラリが便利ですね。ふだん仕事をするうえで、スタッフ間でのデータのやりとりがそれまでは外付けのハードディスクで共有フォルダを介して行っていましたが、作業が進むにつれてだんだん管理が難しくなってくるうえに、時間的なロスも多かった。それが、ライブラリを通じて管理することで、IllustratorとPhotoshopをツールボックスを使うような延長的な感覚でデータの行き来ができ、同期できるのがありがたいです」とコメント。「デザインの現場はグループワークも多く、社内外の人と作業が進むにつれて扱うデータの量も多くなってくるので、データを取り違えたり、古いデータを使ってしまったりといった人為的ミスが増えがちですが、Creative Cloudのライブラリだと、その中だけで完結するのでミスが避けられます」と、そのメリットについて語った。

続けて、尾沢氏は、年間130本程度のペースで作品を制作をしているという、ブルーノートの仕事の場合に言及。「一から文字をつくることはできないので、これまで、イメージを変えるために、フォントをかなり多く購入していました。それが、Typekitの導入によって、フォントを別途買うよりも効率的に作業を進められ、金額的な面でもメリットが大きいと感じています」と、今回のリリースで日本語フォントが拡充されたクラウドフォントサービス「Typekit」の便利さについてコメントした。

また、鈴木氏が「意外と活用している」と語るのが、iOSデバイスのカメラで取り込んだ画像をベクター画像にできるアプリ「Adobe Shape」だ。「Shapeには正直あまり期待はしていなかったのですが、使ってみたら思っていた以上に精度が高くて使えるとわかりました。ラフスケッチを端末のカメラで撮ったものがそのままパス化されて、Illustratorで同期できるというのはすごく便利で、スキャナーとして使う機会が増えた」のだという。

「Adobe Shape」

「Adobe Brush」

プロが「意外と使える」と評価するモバイルアプリ群

一方、尾沢氏が活用度が高いものとして挙げたのは、iOSデバイスのカメラで撮影した写真からブラシを作成できる「Adobe Brush」。尾沢氏は「今まで作業としてブラシをいくつも作ってきましたが、これだと遊び感覚でどこでも作れるので、"今必要だからつくる"というのでなく、試しにつくったブラシをライブラリに入れておくことができて、意外なところでデザインに落とし込めるので、役に立っています」とのこと。「特にブルーノートのデザインは、デザインの引き出しがどれだけあるかにかかっているところもあり、カスレだったり昔の印刷技法をアナログに落とし込んだりすることも多いので、自分のライブラリに置いておく、とかなり効率がよくなる」と語る。

また、2人が共通して2015年リリースの中で注目している機能は、ストックフォトサービス「Adobe Stock」だ。「デザインにとってはストックフォトは切っても切れない関係。実際に操作しているのを見る限り、今まで利用していたストックサイトのどこよりも使いやすそう」(鈴木氏)、「フォントと同じように毎回ストックフォトをかなり買ったりしていたが、有料ではあるものの、別のサイトへ行って手続きを踏むという作業なしにシームレスに利用できる分、作業時間を削減できる」(尾沢氏)とそれぞれコメント。

その他、カンプを作成するためのiPadアプリ「Comp CC」についても「フィニッシュワークまでは難しくても、ある程度仕上がりをイメージできるようなものが打ち合わせの席でできると、クライアントとイメージを共有できるので使いこなせたらすごく効率的だと思う」(鈴木氏)と、新たなサービス・アプリに期待を寄せていた。