映画『ライアの祈り』より(左から鈴木杏樹、宇梶剛士、武田梨奈) (C)2015「ライアの祈り」製作委員会 (C)森沢明夫/小学館

演技への道を切り開いたのは、武田鉄矢の『3年B組金八先生』。まだ空手をはじめる前の8~9歳頃で、これも父の勧めだったという。そして、小学1年生から武田の「オーディションを受け続けて落ち続ける生活」がはじまる。最初に受けたのはモーニング娘。のメンバーオーディション。規模の大小問わず「とにかく何でも」受けた結果、芸能界デビューに至るまで300回以上の落選を経験する。ちなみに、現在の事務所も2度落ちた。「面接まで行ったら、何がダメなのかをまずは知りたいのでもう1度受けます。もちろん、"この程度で折れる人間じゃない"自分をアピールしたいという思いもありました」と振り返り、「折れない心はやっぱり空手が軸になっていると思います」と語る。

念願の芸能界入りを果たし、地道に活動を続けていた結果に待っていたのが、昨年の"瓦"だった。「自分の意識的には何も変わらないんですけど、自分を知ってもらえた大きなきっかけにはなったので、それはすごく大きかったですね」と本人もターニングポイントと捉えていて、当時はさまざまな場所で"瓦割り"を求められた。その数、昨年だけで「300枚以上」。健康診断の時に医者から「頭大丈夫ですか」と心配されるほど世間に頭突き瓦割りのイメージが浸透した。最近は役者業に集中するためにパフォーマンスは卒業したが、今でも「瓦の人」と話しかけられることがあるという。そのことをうれしそうに話す武田だが、個人的には"瓦の人"と呼ばれなくなる日が待ち遠しくもある。

今だから言える、両親への正直な思い

『ライアの祈り』では、「人間として一番大切なことは?」が重要なテーマとなる。「私は『正直』です。自分を作って嘘をついても、いつかはボロが出る。正直に生きている人はいいなと思います。私は特に人前で感情を出さなかったりするので、だから正直な人を見るとうらやましく感じてしまいます」

父が厳格である一方、母は「おおらか」。武田のブログを読むとそれを裏付ける数々のエピソードが書かれていて、思わず笑ってしまったのが「『日直』を『ひじき』って読んだ」「『海外旅行行きたいならヒスがいいよ!チラシ見たら安かったよ!』って言われたんです ヒス。。。? そう、旅行会社の『H.I.S』を『ヒス』だと思っていたみたいです」(2014年11月28日付より)などの逸話。そんな両親のもとで"武田梨奈"は育まれた。

「人間として一番大切なこと」を「正直」と答えた武田。最後に両親への思いを「正直に語ってほしい」と伝えたところ、「えー!?」と戸惑いながらも、しばらく考えこんだ後にこんな言葉を残した。

「両親は私のことをいちばん理解してくれています。精神的に弱っている時も分かっているとは思うんですけど、そこをあえて厳しくしてくれるのは、私のことをよく知ってくれているから。でも、時々私は反抗的な態度をとってしまったり、かわいくないことを言ってしまったり……。それでも、いつも近くで厳しくしてくれるのは、すごくありがたいですね。それがなかったら、今の私はただの弱い人間になっていたと思います。オーディションに落ちても、『大丈夫。次がある』とは絶対に言わない父。褒められて伸びる方はそれでいいと思いますが、私は『お前のやりたい気持ちはそんなもんじゃないだろ』と言われた方が『なにくそ!』となります(笑)。そういうことを分かってくれている家族には感謝ですね」

■プロフィール
武田梨奈
1991年6月15日生まれ。神奈川県出身。10歳から琉球小林流空手道に入門し、月心会黒帯。2009年の『ハイキック・ガール!』で映画初主演を果たし、2013年の『デッド寿司』でテキサスのファンタスティック・フェスト・コメディ部門最優秀主演女優賞受賞、昨年の『祖谷物語‐おくのひと‐』で第24回日本映画プロフェッショナル大賞で新進女優賞を受賞した。今年は『原宿デニール』、『かぐらめ』などの主演作のほか、夏公開の『進撃の巨人』にも抜てき。『ワカコ酒』(15年1月・BSジャパン)で連続ドラマ初主演を務めた。