基礎生物学研究所(NIBB)は6月11日、主に血糖値を下げる働きをすることで知られる「インスリン」と結合し、血液中から細胞内への糖の取り込みを増加させエネルギー源としての利用を促す「インスリン受容体」の働きを抑制する酵素を発見したと発表した。

同成果は、同研究所 統合神経生物学研究部門の新谷隆史准教授、野田昌晴教授らによるもの。詳細は生化学専門誌「Journal of Biochemistry」に掲載された。

具体的には、受容体様タンパク質チロシン脱リン酸化酵素(RPTP)のR3サブファミリーに属する分子群(Ptprb、 Ptprh、Ptprj、Ptpro)がインスリン受容体を脱リン酸化することで、その働きを抑制していることを見出したとする。

これまで糖尿病の治療薬としては、インスリンそのものや膵臓からのインスリンの分泌を促進するもの、腸管からの糖の吸収を邪魔するものなどが用いられてきたが、今回の成果を踏まえ研究グループでは、R3 RPTPサブファミリーを阻害する薬剤が新たな糖尿病の治療薬となる可能性が示されたとしており、今後の治療薬開発に進むことが期待されるとコメントしている。

今回の研究から、R3 RPTPサブファミリーがインスリン受容体の960番目と1146番目のリン酸化チロシンを好んで脱リン酸化することが判明した。1146番目のチロシンのリン酸化はインスリン受容体の活性化に必須で、960番目のチロシンのリン酸化は、インスリンの情報伝達を担うインスリン受容体基質(IRS)の活性化に必須の役割を果たしていることから、これらを脱リン酸化することで、効率的にインスリン受容体の活性化と情報伝達を抑制している可能性が示された