中国大手の検索エンジンBaidu(百度)の日本法人であるバイドゥは6月8日、ネイティブ広告配信プラットフォームなどを手がけるpopInとの経営統合を発表した。

バイドゥはpopInの全発行済み株式を、同社VCとなる東京大学の産学連携本部やGMOベンチャーパートナーズ、フリークアウトなどから取得する。なお、popInは引き続き独立して日本国内における事業運営を行っていくとしている。

バイドゥは、検索エンジン事業など、周辺サービス事業において、収益を広告よりあげている。そのため、グローバルでWeb広告ビジネスや技術に注目しており、2014年2月にネイティブ広告事業をpopInがスタートしたことで目をつけていたという。今後は、グローバルで広告プラットフォームにpopInの広告技術を組み込み、日本国外でもpopInのサービス展開を行っていく。

グローバル展開をBaiduのもとに行う

独自技術"READ"で世界に勝負

popIn 代表取締役 程 涛氏

会見では、バイドゥ 代表取締役社長のチャールズ・ジャン氏とpopIn 代表取締役 程 涛氏らが登壇。今回の経営統合の狙いについて語った。

ジャン氏によると、ネイティブ広告はグローバルで急速な拡大が続いており、昨年から今年にかけても全世界で54億ドルから79億ドル(予測)になるという。日本国内においても、2014年に38億円の市場規模が今年は一気に150億円、2017年には350億円(Cyber Z/シード・プランニング予測)にまで拡大すると見られている。

ネイティブ広告市場は急激に立ち上がりを見せている

こうした状況から、ネイティブ広告事業を持つpopInに目をつけたバイドゥだが、その中でも同社の独自技術といってもいい「コンテンツレコメンドエンジン」と「コンテンツ読了指標"READ"」が決め手になったようだ。

そもそもpopInは、程氏が東京大学情報理工学系研究科の修士課程での発明の特許のビジネス化が礎となっており、社員数12名ながら、Webメディア200社以上が「READ」を導入している。この技術は、実際にユーザーがどこまでWebページを閲覧したのか、時間やスクロール範囲などを総合的にアルゴリズムで判断して媒体社に読了時間や読了率として通知する。この"熟読度合い"がわかることで、「ユーザーが記事に対してどれだけ満足したか」が間接的にわかることから、更なるコンテンツ強化や熟読されやすい記事の再レコメンドによってWebサイト内の回遊性向上に繋がる形になる。

同社の独自技術「READ」では、読了時間などから"流し見層"などの判断が行える

「通常の広告では、コンバージョンレートに目が行くが、ネイティブ広告については、コンテンツの魅力が重要になる、どれほどしっかり読み込まれているか、興味関心を得られているかが重要だと思う」(程氏)

競合には、米国のOutbrainやヤフーとも提携するタブーラなどが存在しているが、程氏は「競合との競争という形ではなく、それぞれの企業にそれぞれの強みがある。メディアに最大限貢献することがミッションだし、競合というよりは共存になると思う」と、拡大するマーケットを1社で独占する形ではなく、メディアのニーズに沿った企業が残るとの見解を示す。

ただ、その一方で程氏は「READはうちのユニークな技術であり、効果測定ツールのユーザーインタフェースも作りこんでいる。その一方で、競合はPCに強みを持つところもあるが、うちのようにモバイルに最適化が進んでいない」とも話し、グローバル展開で勝ち残る意欲も示していた。

popInは東京大学 産学連携本部の支援のもと設立された大学発ベンチャー。当日の会見も同本部で行われた

バイドゥは日本においてインバウンド事業など、日本企業の中国進出サポートを行っているほか、2011年に買収した日本語入力アプリ「Simeji」を提供している。Simejiは現在、iOSとAndroid合計で1500万ダウンロードを記録している。

バイドゥの日本における取り組み