ANSYSの日本法人であるアンシス・ジャパンは6月4日、Amazon Web Service(AWS)のクラウドを基盤としたエンジニアリングシミュレーション「ANSYS Enterprise Cloud」の国内提供を開始したと発表した。

ANSYSのクラウドに対する取り組みは2013年に開始したクラウドとホスティングサービスについてのエコシステムをカスタマに提供するためのプログラムより本格化した。「さまざまなクラウドサービスがある中でAWSにフォーカスしたのは技術面、マーケット面ともに市場のリーダーであるため。実際にカスタマからAWSへのプラットフォームの移行を支援してもらいたい、というニーズはこれまでも受けてきており、この取り組みでそれが実現できるようになった」と語るのは、同社Director of Third Party RelationsのBarbara Hutchings氏。今回提供を開始したANSYS Enterprise Cloudは、文字通りエンタープライズ企業で用いられるシミュレーションに向けたもので、同社のほとんどのアプリケーションに対応しているという。

ANSYSのDirector of Third Party Relationsを務めるBarbara Hutchings氏

ANSYS Enterprise Cloudの特徴は3つあると同氏は語る。1つ目は「シングルテナントである点」で、それぞれのカスタマごとにAmazonのデータセンター内に個別に領域が切り分けられ、セキュアな状態でデータを格納することができる。2つ目は、「ターンキーソリューションとして提供される点」で、これによりカスタマは自社で何かを別途用意することなく、シミュレーションを実行することができる。そして3つ目が「さまざまなソフトウェアツールがそろっている点」で、これら3つが組み合わさった形で提供される。

シングルテナントとしてほかのカスタマと切り分けることでセキュアな状態を確保しつつ、シミュレーションを円滑に実行するためのすべてのソリューションを一元的に提供することを可能としている

実際にサービスを利用するためには、ソフトウェアのコンポーネントを活用するためのWebベースのユーザー環境「ANSYS Cloud Gateway」を別途契約する必要がある。これは、すべてのジョブ管理やデータの管理、シミュレーション管理などを実行するものとなっている。また、実際に演算した膨大なシミュレーション結果をダウンロードしてデスクトップ上で実行しようと思うと、データの転送がボトルネックとなってしまうため、そうした膨大な演算結果をあたかも自分のデスクトップ上で行っているように見せかけられる技術「リモートレンダリング」や、従量課金で演算能力を必要に応じて加算できる「Auto-Scaling HPC」技術なども実装するなど、ストレスのないシミュレーションを実現するための工夫も取り込まれている。

こうしたクラウドサービスにおいて気になるのがライセンスの取り扱いだが、「既存のライセンスを有しているカスタマは、それを用いてクラウドサービスにアクセスすることが可能」(同)とするほか、新たにクラウドのみのライセンスを購入し、従来のライセンスと組み合わせて活用するといったことも可能となっている。

ANSYSのクラウドアプリケーションにおけるライセンスの考え方。オンプレミスのライセンスを保有する場合、それをそのままクラウドサービスに適用することができるほか、別途クラウド用にライセンスを用意して活用することも可能

なお現在、ユーザーインタフェースなどについてはローカライズされていないが、日本のユーザーの反響次第ではローカライズなども検討していくと同社では説明しており、今後、日本での利用に向けた積極的なアプローチを行っていきたいとしている。

実際にAWSを提供するアマゾン データ サービス ジャパンによると、AWSが提供するほかのサービスなどと組み合わせて活用したい場合といったケースも考えられ、そうしたニーズにも柔軟に対応が可能だとしている