サイボウズは5月22日、kintoneユーザーを対象とした初の大型イベントとなる「kintone hive」を開催した。参加者の募集開始からすぐに定員に達してしまうほど、多くのユーザーが注目するイベントであった。

「kintone」はアプリを自由に作成できるクラウドサービス。例えば、案件管理や日報、売上管理など、ユーザーごとに使用したいアプリを作成し、kintone上で管理することができる。同社によると、現在有償の契約社数は2,500社にのぼると発表している。また全国各地で、開発者が中心となって、kintoneのカスタマイズ方法などについて意見交換を行う有志の勉強会、「kintone Café」が開催されており、ユーザー同士のコミュニティも活発だという。

サイボウズのkintone プロダクトマネージャー 伊佐政隆氏は今回のイベント開催について、次のように語った。

「『hive』とは、『ミツバチの巣』という意味だが、『活気あふれる場所』という意味合いを持っている。今回のイベントでは名前の通り、ユーザー同士が活発に意見交換を行う場にしてもらいたい」

サイボウズ kintone プロダクトマネージャー 伊佐政隆氏

kintoneをベースに社内システムをパッケージ化 - サイバーエージェント事例

本イベントでは、ユーザーによるkintoneを利用した活用事例の紹介や、kintoneデベロッパーによるトークなどが披露された。

サイバーエージェント 内部監査室 鹿倉良太氏は、kintoneの導入経緯を次のように語った。

「事業が急成長する中で、従来の請求処理の仕方では支障が生じてきた。これまで、1つのExcelで管理を行ってきたが、入力タイミングの集中や入力ミスなど、Excelでの運用に限界を感じていた。kintoneであれば、DB化・クラウド化することによってデータの強度を向上させ、アプリケーションをつくりわけることによって、入力タイミングの分散化、ルックアップを利用した入力精度の向上を図ることができるため、導入を決めた」

サイバーエージェント 内部監査室 鹿倉良太氏

kintoneをベースに、鹿倉氏は広告配信実績管理システムを構築したという。

「広告配信実績管理システムの基本機能は、発注書の出力機能を持つ"受注管理"、原価などを入力する"実績管理"、請求書を発行できる"請求管理"、入金情報を登録することによって売掛残金の把握ができる"入金管理"、入力情報を仕訳情報として出力できる"会計処理"の5つの機能を持っている。同システムにより、従来請求処理に5営業日かかっていたところを、3営業日に短縮できた」(鹿倉氏)

現在は、広告配信実績管理だけでなく、GAME用モデルやヨミ管理機能付モデル、購買管理アプリ、経費精算アプリをワンパッケージ化し、新規事業が立ち上がると同時に、バックエンドシステムとして活用できる状態にしているという。現在20社が運用を行っているが、「今後はグループ全社への導入を進めていく」と意気込みを語った。さらに、連結・決算も完全に自動化できるような連携システムの構築も視野に入れているという。

顧客とのコミュニケーションの場としても活用 - 関西事例

脳に障害がある子どもたちの訪問介護やデイサービスを運営している関西では、従業員もサービス利用者も、全員がkintone上でコミュニケーションを行っているという。

同社の代表取締役 青山敬三郎氏はkintoneを導入したことによる作業の効率化について紹介した。

「これまでは、あらゆる場面でコミュニケーションの課題を感じていた。朝のミーティングで休んでいたり、早くに出勤しているスタッフがいると、情報共有が行えないというケースや、紙媒体のスケジュールを元に管理していたため、利用者宅に訪問してからキャンセルや予定の変更などに気づくケースがあった。また、会社に戻ってから記録を行っていたため、情報共有までのタイムロスが激しかった。これらの問題が、kintoneを導入することによって、一気に解消できた。さらに、kintoneではテキストだけでなく、画像や動画の共有も行えるため、細かい情報をすぐにほかのスタッフに共有することができる」

関西 代表取締役 青山敬三郎氏

また、利用者とのコミュニケーションについては、「kintoneで作成した申し込みフォームとサイボウズのメールワイズを連携させることによって、入力された情報の中から必要な情報を自動で転記させて、メールでスムーズにコンタクトが取れるようになった。また、これまではキャンセルが発生した際はそのまま空き枠のままになっていたが、利用者にキャンセル通知を行うことによって、参加したい利用者が登録できる機会を増やせるようになった。さらに、kintoneを連絡帳代わりにも活用しており、その日の子どもの様子を写真と一緒に登録して報告している。費用も一緒に提示しているため、利用者は費用の把握ができ、私たちは売上管理を行えるようになった。利用者同士でも子ども服のリサイクルなど、情報交換の場をつくってコミュニケーションを行っている」と語った。

青山氏はkintone活用のポイントを「変化し続ける環境にあわせて、適応したかたちにカスタムし続けていくことが重要」と説明した。

1年半かかっていたプロジェクトが1カ月半でリリース - AmidA事例

判子をインターネットで販売するハンコヤドットコムを子会社に持つAmidAのマーケティング事業部 副部長 大田基樹氏は、kintoneを利用したシステム構築の進め方や開発方法、情報ツールとしての活用方法について、自社の取り組みを基に参加者へアドバイスした。

AmidA マーケティング事業部 副部長 大田基樹氏

「kintone導入前に1年半開発を繰り返していたシステム構築が失敗し、次は絶対に失敗ができないという状況の中で、社内の製造と出荷のシステムにkintoneを導入した。これにより、導入からわずか1カ月半でリリースができた。運用後の効果は作業効率が約30%向上、1日に約4時間かかっていた作業が0になるものもあった。プロトタイピングで現場とギャップを解消しながら、作業を分割し、リリースと修正を高速で繰り返しながら進めたことによって、現場のイメージと相違が生じることなく、進めることができたことが、プロジェクトの成功要因だろう。また、kintoneの基本フォームや画面カスタマイズ、他社のミドルウェアを活用する部分とフルスクラッチする部分とにわけたことによって、柔軟にシステム構築を行うことができた。さらに、部門ごとにアプリをつくる目安を設定し、半年間で100以上のアプリが各部門ユーザーによってつくられた。アプリは海外パートナーも違和感なく利用できるコミュニケーションツールとなっている」

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第2回「kintone hive」の開催は既に決まっており、10月16日にサイボウズ新社屋で行う予定だという。伊佐氏は「次回はkintone awardの選定、表彰を検討している」と意気込みをみせて、今回のイベントは幕を閉じた。