国内のデジタル地図データ製作のナンバー1企業ゼンリン(画像1)の地図作りの様子や、その取り組みをお届けしてきたが、最後となる今回は、現在ゼンリンが開発中の最新技術や、同社の従来とは異なる新しい取り組みなどを紹介しよう。今回はゼンリン本社での取材に加え、関連会社のジオ技術研究所(画像2)にも伺った。

画像1(左)・画像2(右):今回は、ゼンリン本社と100%子会社のジオ技術研究所を伺った

さて1本目の記事で、トヨタの「ヴァンガード」をベースとした、「レーザー計測車両」(画像3)を紹介したのだが、覚えておいでだろうか? その時は今回の3本目で詳細に触れるということで軽く触れただけだったが、実はこの車両は先進運転支援システム「ADAS(Advanced Driver Assistance System)」や、さらにもう少し先の自動運転技術の実現に貢献することを目的とした研究開発用の車両だ。今回は、まずこのADAS並びに自動運転技術に関する研究から紹介しよう。

画像3。レーザー計測車両

これまで紹介してきたゼンリンの計測車両、例えばダイハツ「ミラ」ベースの「細道路計測車両」(画像4)は景観情報は360度カメラ(画像5)のみで撮影しているが、この「レーザー計測車両」は、街中を走って道路を中心とした景観情報をレーザー(点群情報)と360度カメラの両方で収集している(画像6・7)。この点群情報と道路映像の両方を融合させて、道路のペイント、信号機、速度規制看板なども図化し、車線中心線や速度規制情報などを加えた「高精度空間データベース」を開発しており、ADAS、さらには自動運転技術の開発に貢献しようというわけだ。

画像4(左):細道路計測車両。画像5(右):細道路計測車両に搭載されている360度カメラ

画像6(左):レーザー計測車両のルーフにはレーザーや360度カメラが装備されている。画像7(右):収集された点群情報。路面上のペイントもレーザーで点群情報として収集できるのだ

ちなみに、グーグルカーまでは至っていないが、国内の自動車メーカーが研究開発中の車両も、クルーズコントロールとレーンキープの組み合わせで、もう高速道路などは技術的に自動運転が可能である。そこまで来ているのになぜ地図製作企業であるゼンリンが運転支援や自動運転技術に貢献しようとしているかというと、そこにはもちろん理由がある。

自動運転に対する1つの考え方としては、クルマに搭載されたレーダーやカメラで道路環境を認識して単独で走行するという形だが、それだと常時あらゆる情報を収集して事故が起きないようにする必要があり、結果として車載コンピュータに多大な負荷がかかってしまう。

そこで、もし地図情報があらかじめ用意されていたらどうだろうか? 道路の形状やルート、レーンの本数、標識の有無と内容、交差点の形状や信号の有無などなど、レーザー計測車両で収集したデータから作成した高精度空間データベースをあらかじめ持っていれば、車載コンピュータがカメラやセンサなどからリアルタイムに検出した上で判断するという作業をかなり減らすことが可能となる。あとは、周囲の車両の台数や位置、クルマの流れの速度などといった同じ道路でも走る度に変化する動的情報により多くのパワーを振り分けられるようになり、運転支援、さらには自動運転がより実現しやすくなるというのが、ゼンリンの考え方だ。