今年1月から相続税が増税に

今年1月から相続税が増税となったことは聞いたことがある人も多いでしょう。実際今まで、相続税には、基礎控除というものが、5000万円+(1000万円×法定相続人の数)分だけ認められていました。これが、今年1月から3000万円+(600万円×法定相続人の数)に減額されました。

たとえば、妻と子ども2人の家庭なら、今まで5000万円+1000万円×3人で8000万円の基礎控除が認められていました。これが、今年から3000万円+600万円×3人で4800万円まで減ってしまっています。その差、3200万円! 自宅の評価額と証券・預貯金を合計して8000万円程度の人は意外といるものですが、今までなら、相続税がかからなかったものが、今年からそういった人もすべて対象となるわけです。

それではたまらないと、今注目されているのが「生前贈与」です。これは、自分が生きているうちに、早めに子や孫に現金などを贈与すれば、相続財産が減らせ、結果的に支払う税金が少なくて済むというもの。もちろん、財産をタダであげれば、贈与税という税金がかかるのですが、ここのところ、政府が目的を絞って贈与の非課税措置を強化しているのです。

生前贈与の非課税制度が次々とスタート

この仕組みでよく知られているのが「住宅取得等資金の贈与」。通常、1人110万円の贈与は非課税と決められていますが、住宅購入時に頭金などに充当するお金として親などから贈与を受けた場合は、1000万円(省エネ住宅等の場合、1500万円)まで非課税となる制度です。

こういった多額の資金を必要とするときに、親や祖父母から贈与を受ければ、もらうほうにも、あげるほうにもメリットがあるというわけです。

こうした一定の目的のために贈与枠を設けた制度として、今年4月1日からスタートしたのが、「結婚・子育て資金の一括贈与」制度。

これは、祖父母や両親が20歳以上50歳未満の子・孫(受贈者)名義の金融機関の口座等に、結婚・子育て資金を一括して入金。この資金を1000万円まで非課税にするといったものです(ただし、結婚資金の上限は300万円)。

実際、両親や祖父母が入金した後は、利用する子または孫は、必要に応じて、領収書をその金融機関に提出すると、かかった資金分だけが振り込まれるというもの。使途が決められているので、他のことには使えないので、無駄遣いをするといった心配もありません。

結婚式代をすべて親や祖父母に出してもらえる!?

では実際「結婚・子育て資金の一括贈与」は、どんなことにお金を使えるのでしょうか?これは、政府のほうで使途を細く決めており、その一覧が下の表です。

まず大きいのが挙式や披露宴費用。挙式代、会場費と決められていますので、たとえば披露宴に関わるものなら、ドレス代も装花代も食事代もすべてOK! ゼクシィトレンド調査(2014年)によると、挙式・披露宴・披露パーティ総額は平均333.7万円。ご祝儀等はあるものの、カップルの自己負担額平均は125万円。結婚式が終わると2人の貯蓄がすっからかんになるというのはよく聞く話。そのために、挙式・披露宴をしないというカップルも増えています。そんなカップルにとっても、この贈与制度は朗報といえるでしょう。

しかもこの制度、家賃に関わる費用もOKです。結婚にともなって、家を借りるときの敷金・礼金、仲介手数料、引越代はもちろん、毎月の家賃も対象となっています。これは、かなり助かるカップルが多いのではないでしょうか?

ただし、対象外となっているものもあるので、注意が必要です。たとえば、挙式・披露宴関連でいえば、指輪やエステは対象外。新婚旅行代や挙式・披露宴に関わる宿泊費もダメです。

家賃関連でも、光熱費や家具・家電の買い物代はNG。家を引っ越すと、カーテンやライトなどは、どうしても購入が必要となってきますが、このあたりは、自費で購入ということになりそうです。

出産代や保育園代。なんと不妊治療費まで!

この制度、結婚だけでなく、その後の子育て費用も対象となっています。妊娠中の健診費や分娩代。産後院などの産後ケア費もOKです。その後のベビーの保育園・幼稚園・認定こども園代やベビーシッター代も含まれます。また、不妊治療も対象ですので、かなり幅広い分野が適用となるわけです。

結婚や出産の予定のある人は、この際、両親や祖父母におねだりしてみてはどうでしょうか?

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

酒井 富士子

経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。上智大学卒。日経ホーム出版社入社。 『日経ウーマン』『日経マネー』副編集長歴任後、リクルート入社。『あるじゃん』『赤すぐ』(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に『0円からはじめるつもり貯金』『20代からはじめるお金をふやす100の常識』『職業訓練校 3倍まる得スキルアップ術』『ハローワーク 3倍まる得活用術』『J-REIT金メダル投資術』(秀和システム)など。