MNOに対するインセンティブ

これに対して、MNOは直に従うのでしょうか? 前述の「モバイル創生プラン」にはまだ続きがあります。3つめが「もっと速く」で、これは、4Gの開発推進や新規周波数帯(3.5ギガヘルツ)について語っています。これは、MNOに対する「インセンティブ」です。4G開発も手伝うし、新しい周波数も割り当てるよ、という「エサ」であり、これは新規開発、新規需要を生み出すため、端末メーカーに対しても「エサ」になり得ます。

3つめは、4Gシステムや3.5ギガヘルツ帯の割り当てなど。事業者や端末メーカーに対する一種のインセンティブと考えられる(出展:総務省「モバイル創生プラン」)

4つめは「もっと便利に」で、これは、ドコモに対する規制緩和(旧電電公社系の企業であり、さまざまな制限が課されている)やMNO一般、MVNOに関する規制緩和です。

4つめは「もっと便利に」となっていくが、基本的には業界一位のドコモやMVNOに対する規制緩和。これもMNO、MVNO向けのインセンティブであろう(出展:総務省「モバイル創生プラン」)

一般利用者向けのメリットはこの2つです。残り2つは、4Gの開発や新規周波数帯(3.5ギガヘルツ)の割り当てを説いた「もっと速く」、ドコモやMVNOに関する規制緩和などに触れた「もっと便利に」です。ドコモに対して端末ビジネスを減らして通信料金を下げるなら制限を撤廃しましょうというのが1つの狙いです。

ドコモが料金を下げれば、残り2社のMNOも料金を下げざるをえず、結果的に端末ビジネスの比率を下げるしか方法がなくなります。ソフトバンクモバイルの米国スプリント社の買収は、こうした方向性に対抗して、多数の顧客ベースを確保し、端末メーカーへの影響力を残しておきたいと考えたからかもしれません。

MVNOに対するインセンティブ

また、MVNOにもちゃんとインセンティブが用意されています。それは、MNOによる利用料金算定の厳密化と独自のHLR/HSSの運用を可能にするような方向性です。前者に対しては、法改正で、後者については、総務省が主導してMNOとの協議を行わせる予定だといいます。

これはどういうことかというと、MVNOは、MNOに料金を払ってネットワークを借りています。このときの利用料金は、基本的にはMNOが決めるのですが、そのままでは売り手市場なので、MNOが勝手に決められないように「ネットワークのアンバンドル」というルールを作り、コスト算定を厳密に行わせ、不当な価格にしないように法律に盛り込まれています。これをさらに進めるということです。

もう1つのHLR/HSSですが、これは、携帯電話のコアネットワーク(無線部分より先のネットワーク)に置かれる、顧客管理の機能です。ここに、顧客番号(SIMの内部コード)や電話番号、端末番号などが記録されていて、携帯電話ネットワークで端末や顧客に関する情報を管理しています。

現在は、MVNOでこれを管理できないため、MNOが持つHLR/HSSを利用するしかないので、MVNOは、独自のSIMを発行することもできないし、複数のMNOのネットワークを併用することもできません。実際、MVNOと契約したのに送られてくるSIMは、ドコモのSIMカードになっています。