クラウド会計ソフト「freee」を提供するfreeeが、2015年の新プロダクト構想を発表した。「e-Gov」のAPI公開やマイナンバーの通知開始、電子帳簿保存法改正など、今年予定されているさまざまな「電子化」に向けた動きにあわせて、サービスを拡充予定。さらにこれまで掲げてきた「自動化」「バックオフィスの最適化」に加え、「クラウド完結型社会」という新たな事業構想も明らかにされた。

2015年はどんな年に?

オンラインバンクやクレジットカードのWEB明細などと同期し、全自動で会計帳簿が作成できるクラウド会計ソフトfreee。リリースから2年あまりで、30万を超える事業所が利用するサービスに成長。昨年にはクラウド給与計算ソフトもリリースし、個人事業主だけでなく法人ユーザーにも利用を拡大している。急成長を遂げてきた同社にとって、2015年はさらなる攻めの年となりそうだ。

新たな事業構想について語る、freee 代表取締役 佐々木 大輔氏

代表取締役の佐々木大輔氏によれば、2015年は「(政府による)本格的な電子化が始まる年」。4月に総務省が運営する電子申請システム「e-Gov」の外部連携APIが公開されたのを始め、10月には電子帳簿保存法が改正され、これまで紙で保存せざるを得なかった3万円を超える領収証・請求書の電子保存が可能になる。また同時に社会保障・税番号制度「マイナンバー」の配布も開始され、来年には「マイナンバー」を使って様々な行政手続きがオンラインでできるようになると言われている。

「これまでバックオフィス業務の自動化、最適化を進めてきて、かなりの部分をクラウドでできるようになったが、未だに領収証や請求書を紙で持つ必要があったり、行政には紙の書類で提出しなければいけなかったりと、どうしてもペーパーレス化、クラウド化できないところがあった。今年、その環境が大きく変化する。さらにfreeeがプロダクトとして進化することで、すべてクラウドで完結する『クラウド完結型社会』を実現したい」(佐々木氏)

これまでペーパーレス化が難しかった、行政への申告や、領収証や請求書などをすべて電子化。「マイナンバー」の活用で、従業員情報もクラウド管理ができるようになれば、「クラウド完結型社会」が実現できるというのが、freeeの事業構想だ

その事業構想に向けた第一弾となるのが、「e-Gov」のAPI公開を受けて実装される、クラウド給与計算ソフトから労働保険の更新手続きができる新機能だ。これによって年1回の労働保険更新に必要な申告書の自動作成から、提出、承認、保険料の振込まで、すべてがfreee上で完結できるようになる。公開は5月後半の予定で、おそらくe-Gov APIを利用した日本初のサービスになるという。

「僕自身も経験したが、社員が入社すると手続きがたくさんあって、労働基準監督者、健康保険組合、年金事務所といくつもの場所を回らなければならない。これがfreeeの中から申告できるようになれば、作業が大幅に軽減される。そういう世界を目指していきたい」(佐々木氏)

給料の情報や前年度の労働保険料などをもとにした、複雑な計算が必要になる労働保険料をfreeeが自動計算。さらにここから申告手続きまでできるようになる。写真は申告画面のイメージ

さらに10月には電子帳簿保存法が改正され、すべての領収書や請求書の電子保存が可能になることを受けて、freeeのファイルボックス機能(電子データ保存機能)を新たな電子保存要件に対応させる予定。同じく10月には「マイナンバー」の通知が開始されるのを受けて、法人向けにfreee内で従業員や外注先のマイナンバーを管理できるサービスも提供する。このサービスは新たに個人情報管理を義務づけられる、税理士向けにも提供予定。企業や税理士はマイナンバーの管理をfreeeに委ねることで手間を削減できる。

マイナンバーには法人向けの「法人番号」もあるが、これを取引先管理に紐付ける機能や、従業員の給与と経費精算をまとめて振り込めるようにする機能なども、2015年度中を目処に実装予定。freeeではこれら機能の拡充と最適化を進めていくことで、「クラウド完結型社会」を実現したいとしている。