フリーエンジニアを支援するプラットフォーム事業

首都圏コンピュータ技術者(MCEA)は4月15日、東京都港区赤坂で「ITエンジニア不足に関する課題と解決策」勉強会およびフリーエンジニアのブランド化プラットフォーム事業「PE-BANK」事業戦略説明会を開催した。

MCEAは、「プロエンジニアの笑顔を見たいから」をビジョンとして1989年に15名のフリーランスが協同組合を立ち上げ、2007年に株式会社化した企業だ。

同社では、フリーエンジニアのブランド化プラットフォーム事業「PE-BANK(プロエンジニア・バンク)」を展開している。これは、独立してフリーエンジニアとなったITエンジニアと「プロ」契約を結ぶことで、フリーエンジニアの社会的地位を向上するためのブランド化、そして個人での単独受注よりも安定かつ信頼度の高い「共同受注」を実現することで IT開発現場の人材不足を解消するというもの。また、営業/総務/経理などをトータル支援する「まるごとサポート」も提供している。福利厚生や教育サポートに加え、確定申告の際は委託税理士による準備から申告まで手厚いサポートを受けられるそうだ。

首都圏コンピュータ技術者 代表取締役齋藤光仁氏

首都圏コンピュータ技術者 代表取締役の齋藤光仁氏は「ITエンジニアが独立を考える際、最大の課題は安定的な営業活動が困難なこと、そして経理などの業務に時間が割かれてしまうことです。そこでPE-BANKのまるごとサポートが営業/総務/経理を受け持つことで、フリーエンジニアとして本来の業務へ注力できるようになります」と語る。

同社では現在、2,447人(2015年3月末時点におよぶフリーエンジニアと契約。双方が対等の立場という観点から、契約したフリーランスのITエンジニアのうち822名が個人株主にもなっている。エンジニアの声を的確に経営へと反映し、より働きやすい環境作りを目指すべく、エンジニア代表の取締役を選出しているのも大きな特徴だ。



システムを介してマイナンバーへの精通が必要不可欠

日本個人情報管理協会(JAPiCO)専務理事 内山和久氏

続いては、「ITエンジニアに求められるもの~マイナンバー制度と個人情報保護~」と題して、日本個人情報管理協会(JAPiCO) 専務理事の内山和久氏が講演を行った。

内山氏はまず、マイナンバー制度の概要および各種制限事項・処罰対象、そして個人情報保護法と比べて、数段厳しい罰則規定がある点を解説。フリーエンジニアは、個人事業主としての立場から個人番号関係事務実施者となること、ITエンジニアとしての立場では役割・使命と専門性の向上が求められることを強調した。

「ITエンジニアは今後、システムを介してマイナンバーに精通することが必要不可欠となります」(内山氏)

人事・経理システム改修などで顧客をリードするためには、“マイナンバーの知識+個人情報保護の知識+情報技術”が重要になるのである。 マイナンバー制度の導入により、すべての企業では個人情報管理の重要性が一段と増してくる。こうした背景から、MCEAでは「個人情報管理ソリューション」として、無料診断サービス/アセスメントサービス/体制構築支援サービス/運用サポート/JAPiCOマーク取得支援サービスを提供。JAPiCOとの連携によって、企業が最適な個人情報の保護体制を構築するための支援、資格取得支援などを行っている。実際にPE-BANKでは、150名が上級個人情報管理士の資格を取得しているそうだ。

エンジニアの品質を保証してブランド化

PE-BANKの詳細および事業戦略については、代表取締役の齋藤氏が再び登壇した。

単なる登録とは異なり、PE-BANK独自の厳格な基準を満たしたエンジニアのみが、MCEA認定のプロエンジニアとしてプロ契約を結べると解説。「エンジニアの品質を保証してブランド化すること」により、エンジニアが独立へと向かう新たなルートを築くという。プロ契約にはは、厳格な基準が設けられており、以下のような項目が挙げられる。

1. ITエンジニアとしての雇用契約・請負契約・準委任契約・派遣契約に基づく「実務経験」

2. 個人事業主としての「開業届けの提出」

3. 青色確定申告による「納税」

4. 顧客企業との契約に対する、自らの判断と責任における、すべての「契約条件の確認」

5. 業務遂行における、自身は自営業者(個人事業主)であり、「誰にも雇われていないという自覚」

6. 「直接対面」による最終面談の実施

契約エンジニア数は、2014年9月末が2,026名であったのに対し、2015年3月末には2,447人と20.78%増。取扱高(共同受注金額)についても、前期比20.34%増を実現している。

この背景として、慢性的なITエンジニア不足、マイナンバー制度の導入などによる需要拡大、派遣法の改正による「働く環境」の変化を挙げ、MCEAが貢献できるフィールドの拡大をアピールした。

「3年後には、契約プロエンジニア数6,000名、取扱高300億円の達成を目指します」と、今後の展開について語る齋藤氏。この目標を実現するべく、CI(Corporate Identity)・BI(Brand Identity)の強化、広告宣伝活動、積極的なセミナーの開催などを行っていくそうだ。

首都圏コンピュータ技術者 取締役 柘植英一氏

最後に、自身が現役のプロエンジニアであり、MCEAの取締役を務める柘植英一が登壇。「フリーエンジニアは、開発業務以外に時間を割かれると、本来のパフォーマンスが出せないのが大きなネックです。その点、MCEAとプロ契約を結ぶと営業/総務/経理のサポートで開発業務に集中できます。個人では難しい案件を受注できたり、自由な時間が作れたりするのもメリットですね。スキルアップのために必要となる、資格の受講料や受験料を補助してもらえるのも助かります。また、同じ個人事業主の仲間がいるというのもポイントのひとつです」と、自身の経験から得たメリットを語った。