ピンタレスト・ジャパンは14日、プレス説明会を開催。同社が運営する「Pinterest(ピンタレスト)」の概要をはじめ、今後の事業戦略などを説明するとともに、このほど開設された新オフィスを公開した。

Pinterest=「オンライン上でヒントになるアイディアを収集するための"ビジュアルブックマーク"ツール」というのが同社の定義

Pinterestはオンラインの"掲示板"

Pinterestは、オンライン上でヒントになるアイデアを見つけてコレクションしておく"画像ブックマークサービス"。パソコンおよび、iOS、Android向けにアプリを用意しており、無料で利用できる。2010年にサンフランシスコでサービスを開始。海外ではすでにロンドン、ベルリン、パリにも支社を開設し、30以上の言語に対応。日本においては、2013年10月に法人を設立し、同11月に日本語サービスを開始している。そしてこのほど、"ジャンプアップスタートチーム"と称して、初めて海外に本社専門チームを海外に派遣。エンジニアとデザイナーを日本に常駐させ、日本の文化やデジタル環境などの調査を行い、よりローカライズしたサービスの開拓と提供を目指す方針だという。

ピンタレストにおけるユーザー体験の全体像のイメージ

同サービスでは、"ボード"と呼ばれるカテゴリー分けするフォルダのようなものを任意で作成し、それにオンライン上で見つけた画像や情報を保存していく。その感覚が掲示板にメモを貼り付けていくに似ていることから、サービス上では保存することを"ピン"すると呼んでいる。さらに、ユーザーはPinterestの検索機能や保存した画像との関連性から自動的にレコメンドされる画像をウェブのリンク機能のようにたどることができ、より収集やコレクションが広がっていくという流れのイメージだ。

だが、こうして集めた画像をどのように活用するかやメリットがユーザーにとっての関心事といえる。説明会に出席した、米国本社インターナショナルビジネス部門長・Matt Crystal氏によるプレゼンテーションでは、愛娘の部屋の模様替えのイメージやアイディアをピンタレストを使って集めた事例や、料理やインテリア、ファッションのヒントとなるビジュアルを集めたりしている活用事例などが紹介された。

「Instagramとは違う」Pinterestの特徴

米国本社インターナショナルビジネス部門長・Matt Crystal氏

また、Pinterestは全体の3分の2が企業ユーザーが占めているとのことで、国内でもH.I.Sやユニクロ、ローソンなどの大手企業がビジネスドメインを運用している。日本法人の代表取締役社長の定国直樹氏によると、その1社であるH.I.Sは「キャンペーンなどの告知はFacebookなどのSNSが向いているが、ピンタレストは消費者が旅行に行きたいという気持ちを喚起するのに活用したい」と利用目的を語っており、国ごとにまとめた写真だけでなく、色のイメージやイベントなどでカテゴライズした世界各地の写真などを公開しているという。

さらに、今回の説明会においてPinterestが強調していたのは、昨今急速に普及しているSNSとの違いだ。「Pinterestは興味のあるものを深めていくためのツール。いわば未来をつくっていくためのツール。SNSとは明確に違う」とCrystal氏。定国氏も「Instagram」を例に出し、「Instagramは、今起きていることや過去に起きたことを友達にシェアするものだが、ピンタレストは、未来に自分が成し遂げたいことのための学びや発見を促すためのもの。情報を集めるために他のユーザーの力を借りるといった仕組みはあるものの、あくまでも自分のためのツール。過去はどうでもよくて、友達に伝えることが目的ではない」と比較し、両サービスの明確な違いを説明した。

ピンタレスト利用例の紹介

ちなみに、ピンタレストのユーザー数は現時点で全世界で7000万人以上。このうち米国以外が40%を占め、日本での月間のアクティブユーザー数は過去1年で3倍に増加したという。また、日本では、"レディースファッション"、"アート&デザイン"、"インテリア"、"ハンドメイト・DIY"、"旅行"が人気カテゴリーの上位5つとのことだ。

このほど開設されたピンタレスト・ジャパンの新オフィスも、実際にPinterest上でオフィスデザイナーと情報を共有し、イメージを膨らませていったという

Pinterestを使うクリエイターの実例

このように、新たなアイディアや発想に役立てるためのビジュアルを収集するためのツールと打ち出すPinterestは、クリエイティブな活動を行う人には非常に有効なツールだ。説明会の会場となったピンタレストの新オフィスには、ファッションデザイナー山縣良和氏と坂部三樹朗氏がプロデュースする東京ニューエイジによる、Pinterestを使ったインスタレーションを展示。山縣氏と定国氏によるトークセッションも行われた。

説明会に出席し、ピンタレスト・ジャパン代表取締役社長の定国直樹氏(右)と対談を行った、ファッションデザイナー山縣良和氏(左)

山縣氏が公開した自身のピンタレストの"ボード"の一例

山縣氏は、ロンドンの美術学校で学んだ時代を振り返り、「向こうではとにかくリサーチをしろと言われる。新しいアイディアは、過去のアーカイブからどれだけ取り入れられるかが重要。現地の学校では実際のボードにビジュアルを貼っていき、まずは理詰めではなくて混沌としたものから関連性を探っていくというやり方をする。PinterestはそれをWeb上でできるサービス。しかも関連性のあるものが次々と表示され、流れるように気になるものを集めていくことができる。しかもクオリティーが高いビジュアルが多く、重宝している」と、自らのクリエイティビティーにピンタレストを役立てているエピソードなどを語った。

ピンタレスト・ジャパンの新オフィス。東京ニューエイジによる、Pinterestを使ったインスタレーションが展示された