東京大学大学院情報学環、NTT、KDDI研究所、日立製作所、NEC、富士通は3月31日、日米欧を結ぶ仮想ネットワークにおいて、グローバルなマルチドメイン環境でソフトウェアによってプログラマブルに制御できる新たな仮想網の構築および新世代ネットワークアプリケーションの実験に成功したと発表した。

今回、6つの実験が行われた。

「日米欧3大陸スライス相互接続(KDDI研/日立/東京大学)」実験では、スライス・エクスチェンジ・ポイントを介して、日米欧のネットワーク仮想化基盤間で資源情報や制御情報を交換する技術の検証が行われ、世界規模のスライス(ネットワーク仮想化技術を用いて生成される論理的なネットワーク)の即時構築に成功した。

スライス相互接続(スライスフェデレーション)の概要

「グローバルマルチドメイン環境での次世代映像配信実験(NTT)」では、相互接続された日米間のスライスで、端末やネットワークの状況に応じて映像の圧縮やマルチキャスト機能を仮想ネットワーク上に自動配備する次世代映像配信技術の実証実験を行った。

次世代映像配信技術の概要

「アプリケーション特化QoS制御(東京大学)」では、端末からのパケットに対し、端末内で利用しているアプリケーション識別タグを自動的に付加する仕組みを開発し、その識別タグをネットワーク仮想化ノードで検出し、アプリケーションごとに仮想化スライスに収容するネットワーク・アーキテクチャを実現した。この技術をネットワーク仮想化ノードのスライスに適用し、各スライスでアプリケーションに応じて、QoS制御やトラフィック・エンジニアリングがSDNのフレームワークを用いて実現できることが実証された。

次世代映像配信技術の概要

「IPON:IPアドレスによるスイッチング実験(日立)」では、ネットワーク仮想化テストベッド上のスライスでIPONプロトコルで動作するスイッチから構成されたIPONネットワークを構成し、そのネットワークに接続した仮想端末間でのIP通信実験を成功させた。IPONプロトコルは冗長なアドレスをIPアドレスに統一するだけでなく、Ethernetとは異なりループ(冗長性)のあるネットワークでも正常に動作することを確認した。

IPON:IPアドレスによるスイッチングの概要

「スライス内でのIPSによる通信制御実験(NEC)」では、ネットワークのプログラマビリティの検証のために、JGN-X上の仮想化テストベッドにてスライスを作成し、そのスライス内で1Gbpsを超える通信トラフィック環境において、クライアントからの動画ストリーミングアクセスに対する、ソフトウェアベースIPSと仮想OpenFlowスイッチvOFSによる経路制御の実証実験を行った。

スライス内でのIPSによる通信制御実験の概要

「ユーザ移動先を追随するデータ配置機能による応答性能の向上実験(富士通)」では、ユーザーの位置を検知して、ユーザーが利用するデータをユーザーの近くの仮想化ノードに事前配置することで、ユーザーアクセスの応答性能の向上を図る技術の検証実験を行った。各仮想化ノードに、「ユーザー移動先の検出」と「移動先を追随してデータ再配置」を行う通信制御アプリケーションを配備し、この通信アプリケーションの連携により、ユーザーが移動した場合に移動先の仮想化ノードを検出し、ユーザーに近い仮想化ノードにデータを移動・配置でき、ユーザーがデータにアクセスできることを確認した。

ユーザーの移動先を追随するデータ配置の概要