アルバックは3月25日、次世代MEMSデバイスとして期待されるCMOS搭載MEMSデバイス向け量産対応低温PZTスパッタリング技術を開発したと発表した。

インクジェットプリンタのヘッドやカメラのオートフォーカス用アクチュエータなどの圧電MEMSには、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸塩、Pb(Zr,Ti)O3)の薄膜が用いられているが、次世代技術として、そうした圧電MEMSとCMOS技術を融合することで、デバイスの高性能化・多機能化・小型化を図ろうという動きが活発化してきている。しかし、PZT薄膜の結晶化温度はスパッタリング法で600℃程度、Sol-Gel法では700℃程度と高温のプロセスが必要なため、500℃以下の低温プロセスが必要となるCMOSへの搭載が困難であった。

同技術は、「多種応用の異なった要求を同時満足する高性能の達成」、「LSI搭載可能の温度範囲でのプロセスの開発」、「高信頼性量産スパッタモジュールの実現」の3つを目標にして開発されたもの。独自技術の採用により、成膜温度はCMOSにも適用可能な485℃ながら、実用に耐えうるスループットとPZT薄膜の品質を実現したという。

具体的には、通常のスパッタリングプロセスでは下部電極層の形成の後、圧電層の形成という順であったが、新たにその間にバッファ層を形成するプロセスを入れることで、低温化を実現したという。この結果、PZT薄膜の膜厚2.0μmにおける電気特性は圧電定数(e31):-17C/m2、絶縁耐圧:±100V、サイクル特性:>1011回を達成しており、PZT薄膜において世界最高レベルの性能を量産条件で確認したとする。

今回開発した技術で作製されたPZT薄膜と従来技術によるPZT薄膜との比較。左が圧電定数、右が絶縁耐圧

なお、同社の既存スパッタリング装置「SME-200」に組み合わせることが可能な同技術を採用した専用チャンバもすでに開発済みで、2015年末には出荷を開始する計画としている。

今回の技術を量産現場で利用可能にする専用チャンバもすでに開発済み。すでに提供を行っている量産用スパッタリング装置と組み合わせて使用することも可能