"隠れ家"という言葉がぴったり合うところ。東京都内で源泉掛け流しの湯や露天風呂を堪能できる温泉施設の中でも、極めて情緒あふれる施設といえば、なんといっても前野原温泉「さやの湯処」(東京都板橋区)だ。
古家ならではの昔懐かしい雰囲気が魅力
なんせまず、建物に歴史がある。施設はもともと、戦後まもない昭和21年(1946)に建てられたという事業家の邸宅。しかも、その翌年に全国から集めた銘石を配した美しい庭園付き。やがて住まい手がいなくなった空き家が、古家再生建築家と作庭家の手によって誰もが気軽に利用できる温泉施設に生まれ変わったのだ。
オープンは2005年。以来、多くの利用者から「ここにくるとなんだかホッとする」との声が挙がっているという。歴史を刻んだ建物、庭を彩る季節の樹木、そして静かなる時の流れが相まって、あたたかい気持ちが呼び覚まされるのだろう。これからの時期の見どころは桜やツツジ。秋に色付くカエデも、日本情緒を際立たせてくれる立役者だ。
うぐいす色の濁り湯を壺湯や露天で
温泉の泉質はナトリウム―塩化物強塩。入浴すると皮膚に塩分が付着して汗の蒸発を防ぐため、湯冷めしにくいのが特徴だ。都内では珍しいうぐいす色の濁り湯を壺湯や露天で楽しめる。
「挽きたて・打ちたて・茹でたて」の蕎麦はいかが?
好みの浴槽でゆっくりと身体をほぐした後は、食事処「柿天舎」に立ち寄っていただきたい。昭和21年(1946)に建てられた邸宅をそのまま生かした造りで、座敷にも洋間にもどこか懐かしい雰囲気が漂う。人気メニューは天ぷらせいろ(1,030円)。厳選した蕎麦粉を使い、「挽きたて」「打ちたて」「茹でたて」にこだわっているため、香りは高くのどごしは爽やかだ。
「昼間は年配のご夫婦なんかもいらっしゃいますが、夜になるとお仕事帰りの若い方も多いですね」とスタッフさん。ちなみに、施設は平日=830円(小学生以下は520円)、土日祝日=1,030円(小学生以下720円、※土日祝日のみMAX5時間)と大変リーゾナブルなため、何度もリピートしたくなるのがまたいいではないか。
都営三田線・志村坂上駅徒歩8分とアクセスも良好。もちろん無料駐車場も完備なので、家族や恋人、友だちを誘って一緒に出掛けてみてはいかが?
※記事中の価格・情報は2015年2月取材時のもの。価格は税込