デジタルハリウッドが主催する動画活用セミナーが3月12日、東京都・御茶ノ水にて開催された。本稿では、同セミナーにて紹介された、コクヨのオウンドメディア「コクヨチャンネル」における動画活用の事例をお伝えする。

コクヨチャンネル イメージ

さて、みなさんは「コクヨチャンネル」をご存じだろうか。コクヨが取り扱う文具やオフィス家具、企業情報に関する6つの番組を設け、動画コンテンツを継続的に公開するサイトだ。

「コクヨくださぁい!」商品を説明する内容となる動画を集約。通販番組のような形式で、コクヨのネットショップへの動線も担う

「レッツリポート!」各種メディアでは取り上げられ難いが、企業理解などを深めるためにも顧客に訴求したい広報的な内容を扱う

「コクヨ取説の部屋」お客様相談室と連携し、商品の説明を行うチャンネル。買ってもらうためのPRではなく、買ったあとのフォローを目指す

「ザ・コクヨGメン」コクヨくださぁい!のブラッシュアップ版として、お笑い芸人を起用し、商品を紹介するチャンネル

「ベンリのタネ」こちらも同じく商品を紹介するチャンネルだが、紙カタログでは説明が難しい商品の機能などに特化している

「あの街、この街、コクヨのある街」全国にある販売店を紹介する番組で、販売店との関係強化にも貢献する

公開されているすべての動画は、コクヨチャンネルにて掲載するためだけに広報部門が主導となって制作したもの。YouTubeや動画アドネットワークを利用せず、オウンドメディアのコンテンツとして配信している。

オウンドメディアで展開したからこそ、実現したことがあった

コクヨファニチャー 事業戦略本部 提案マーケティング部の佐藤詠美氏によると、同サイトの設立は、マスコミを対象に紙のプレスリリース配信と記者発表を中心に行ってきた「従来のアナログな広報活動」から、Webを活用することで一般ユーザーまで対象を拡大し、積極的に情報を発信する「攻めの広報活動」へ変革する狙いがあったという。

コクヨファニチャー 事業戦略本部 提案マーケティング部の佐藤詠美氏

加えて、本社部門が広報活動に求めるものとして、どのメディアにどれだけ露出したかではなく、事業を支援することへのニーズが高まったことをキッカケに、商品情報をコンテンツとして発信できるオウンドメディアと、情報が伝わりやすい動画を選択するに至った。

「動画をまとめた1つのサイトを作るのではなく、コーポレートサイトにある商品の紹介ページに動画を埋め込めば良いのではとの意見もありました。けれど、商品ごとに動画を見せる形式では、他の動画コンテンツへの回遊が発生しにくい。これでは、他の商品との出会いが生まれないんですよね」(佐藤氏)

これはYouTubeでの公式アカウントを利用した動画配信も同様のようで、シェアや認知の拡大への強みを持つ一方、他社などの動画へ離脱してしまう可能性もあると、同セミナーのセッションに参加したネイキッド ゼネラルマネージャー/ディレクターの大屋友紀雄氏は説明する。

番組の1つとなる「コクヨくださぁい!」では、通販番組の形式で商品を紹介し、商品購買サイトへの送客を目指したため、離脱は避けたいところだ。

視聴者にとって面白く、意味のあるコンテンツか

また、コクヨチャンネルでは、評価指標として「動画視聴前後の態度変容」をKGI(重要目標達成指標)とする。そのため、KPI(重要業績評価指標)として、アクセス数や動画再生回数のほか、完視聴率を設ける。

佐藤氏によると、一般的に、Web動画の尺は90秒前後が主流で、完視聴率は10%ほど。一方、コクヨチャンネルの動画は、動画の尺が3~4分と長めだが、完視聴率は平均で約40%を達成するという。

「視聴者の気持ちになって作ると、見てもらえるコンテンツになると思っています。忙しく、時間がない人たちがわざわざ見てくれているわけだから、楽しんでもらったり必要な情報を提供できるよう、丁寧にきちんと『コンテンツ』として制作する。個人がYouTubeなどに動画をアップロードできる時代だからこそ、コストをかけずスマートフォンで撮影して編集するという方法ではなく、専門の人に企画から作ってもらうことが大切なんじゃないかなと思っています」(佐藤氏)

ネイキッド ゼネラルマネージャー/ディレクターの大屋友紀雄氏

「CMはワンメッセージでインパクト重視とよく言いますが、それは見てもらえないことを前提とするためです。Webでは、ストーリー性を持たせることで完視聴率があがります。コンテンツとして資産として、ためておくこともできる。だからこそ、伝えたいメッセージとそこまでのストーリー(企画)が重要になってくるのです」(大屋氏)

佐藤氏は今後の課題として、動画の再生回数を増やすことをあげる。そのために、商品ページやコーポレートサイトのトップページ、プレスリリース、SNSといったさまざまなチャネルを活用し、流入促進を図る考えだ。