ヤマハの「YVC-1000」

「YVC-1000」の導入事例として最も多いのは、会議用のツールとしての用途だろう。特に大人数が参加する会議に置いて、しっかりと声を収集し、聞き取りやすい形で伝えることのできる「YVC-1000」が大きな力を発揮している事例をこれまでも紹介してきた。

しかし、多対多という会議の場だけでなく、1対多となるような使い方もある。セミナーや遠隔教育では、講師が話す内容を多拠点に配信することが必要となる。そうした場でも「YVC-1000」は活躍する。

地域医療を発展させるコミュニケーションに「YVC-1000」を採用

医療法人社団創生会 町田病院は、一般病床120床の総合病院だ。町田市忠生地区で東京都二次指定救急医療機関として、地域に根ざした医療を目指して活動している。その一貫として、2013年12月に発足した「相模原町田地区介護医療圏インフラ整備コンソーシアム」にも参加している。

コンソーシアムでは、医療拠点や会議施設をスムーズに連携させることで、地域医療を充実させようとしている。その中で必要とされたのが、遠隔会議システムだ。システムを整えることで、離れた施設間でも研修やワークショップに参加できるようにすることが狙いで、会議システムは「RICOH Unified Communication System(以下RICOH UCS)」が採用された。

RICOH UCSを利用した町田病院の遠隔会議システム

テスト段階ではいろいろなマイクスピーカーシステムを試用したが、話者の声が聞き取りづらい、質問をしたい時にはマイクの近くまで移動して大声で話さなければならないなど、課題が多かったという。そこで導入されたのが、ヤマハの「YVC-1000」だ。

導入のポイントは、すぐれた集音能力や音量・音質のほか、操作が簡単で使いやすいという部分だ。またマイクとスピーカーがセパレート構造であるため、それぞれ最適な位置に配置できることも重要だったという。

町田病院 医療相談員 社会福祉士 介護支援専門員 小澤奈穂美氏

「およそ月3回、RICOH UCSと組み合わせてYVC-1000を活用しています。導入してからは快適に研修会が実施できているので、感動しています。一度使えば操作は簡単に覚えられますし、マイクが手もとに置けて、ミュート操作もすぐできるのが便利です。他会場の方も聞き取りやすいという反応で、YVC-1000に興味があるようです」と語るのは、医療法人社団創生会 町田病院 医療相談員 社会福祉士 介護支援専門員である小澤奈穂美氏だ。

月に2度開催される5拠点から総勢20名が出席する事務局会議や運営会議、13拠点から総勢150名ほどが参加する研修会など、現在や研修会やワークショップを中心とした活用が進められている。将来的には症例カンファレンスでの活用も視野に入れているという。

遠隔姉妹校の授業中継はディスカッションに「YVC-1000」を利用

聖心女子学院は、1908年から東京都において女子の小中高一貫教育を行ってきた学校法人だ。キリスト教教育を行う学校でもあり、国内に聖心女子大学、聖心女子専門学校、札幌聖心女子学院、不二聖心女子学院、小林聖心女子学院、聖心インターナショナルスクールといった姉妹校が存在する。この7つの姉妹校が互いに協力し、さまざまな会議や公開授業・訪問授業を行うなど連携を深めてきた。

聖心女子大学

そうした中、札幌聖心女子学院が2014年3月に文部科学省からスーパーグローバルハイスクールに指定された。これを受けて大学の授業は行事の一部を札幌聖心女子学院に中継し、質疑応答を受けたいという遠隔システムへの要望が出てきたという。大学の情報化推進プロジェクトチームが要望に応えるべく、さまざまなシステムを試用した結果、選択したのが、Web会議システム「LiveOn」と、その推奨マイクスピーカーである「YVC-1000」だった。

聖心女子大学文学部教育学科 教授 永野和男氏

導入にあたっては姉妹校との会議やプロジェクト等の打ち合わせ、パワーポイント等の資料を用いた学校説明会などでトライアルを実施。そこで評価されたのは、「YVC-1000」のマイクとスピーカーが分かれた構造であるため臨場感のあるコミュニケーションができることと、音質がクリアであることだった。これによって遠隔会議であることを意識せずに参加でき、Web会議のストレスを感じさせれなかったという。また、設定や操作、配線も簡単であり、イニシャルコストとランニングコストが安価であったことも決め手となった。

「遠隔学習について研究する中でさまざまなシステムを使ってきましたが、映像中心のものが多く音声に関しては実用性に欠けるものがほとんどでした。授業や会議は音声が重要なため、音質が良いLiveOnとYVC-1000を連携させたシステムでは双方向の授業やセミナーといった使い方に道を開くものと考えられます。ようやく遠隔協同学習を実施できるレベルに達したものが出てきたのではないかと、その可能性を高く評価しています」と語るのは聖心女子大学文学部教育学科 教授である永野和男氏だ。

大学のWeb会議室

姉妹校の中で東京の聖心女子大学、北海道の札幌聖心女子学院、静岡の不二聖心女子学院、兵庫の小林聖心女子学院の4校は、特に教員も事務も連絡や交流が盛んだという。その交流に「LiveOn」と「YVC-1000」を使用すれば、経費の削減や時間のロス、教職員の業務の軽減につながるだろう。

姉妹校に設置されている「PJP-20UR」

今後は大学に要望されている出張授業を遠隔授業として行うことも視野に入れているという。また、音質の良さを活かした語学学習での活用も予定しており、留学生の日本語スピーチを高校に中継するといった活用や、文系でよく行われる少人数でディスカッションするような授業での利用など、聖心女子学院ではこのシステムに大きな可能性を感じているという。