Tポイントのデータを保有するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)とインターネット広告代理店となるオプトのジョイントベンチャー Platform ID(PID)にて代表を務める清野と申します。

今回、「リアルデータ(実店舗での購買行動)の活用で、Webマーケティングはどう変わるのか」というテーマに関しての考えを紹介します。

Web広告の発展を支えた「ユーザーデータ」

まず、リアルデータを考えるにあたり、Web広告の特性となる「効果を測定できること」と「ターゲティングが正確にできること」を整理する必要があります。これらがベースとなり、Web広告は発展してきたと考えられるためです。

Google アナリティクス公式サイトイメージ

Web広告の効果を測定する技術は、弊社の株主となるオプトが2000年、「ADPLAN」という効果測定ツールを開発したほか、2006年頃にはGoogleが、「Google アナリティクス(GA)」をリリースしました。同ツールは昨今、マーケッターにとって必要不可欠といっても過言ではないでしょう。

一方、ターゲティングの正確性という面では、検索連動型広告(リスティング広告)の登場があるでしょう。検索結果に応じたターゲティングにより広告配信するという同広告は、広告主のニーズを満たし、誰もが認識するメディアプランにまで成長しました。

Yahoo!インタレストマッチ公式サイトより

2007年以降にはリスティング広告だけでなく、バナー広告においてもターゲティングをしようと言った動きが広まり、Yahoo!の「インタレストマッチ」やGoogleの「コンテンツターゲット」などが登場しました。これらは、インターネット上におけるユーザーのWebサイト閲覧履歴や検索履歴、属性などのデータを用いてターゲティングを行うものです。

このように、インターネット上でのユーザーデータは、Web広告の効果測定やターゲティングによる広告配信に活用され、Web広告の発展に必要不可欠であったと言っても過言ではないでしょう。
そして、今後、Web広告・Webマーケティングをさらに成長させる要素として、実店舗での購買履歴「リアルデータ」を用いたターゲティング配信が主流となると予測しています。

リアルデータを活用し、最適なターゲティングを実現する3つの方法

これまでのターゲティングはあくまでも、「ユーザーがWeb上でどんな行動をしたか」に限定されていました。しかし実際のところ、ユーザーの購買行動は、主にリアル(実店輔)にて行われることが多く、Webにおける購買行動は数%に留まります。

これにより広告主は、リアル(実店舗)の情報を使って広告配信を行いたいとのニーズが高まっており、PIDにおいても、実店輔での購買履歴を使ったバナー配信サービスの売上は、大幅に右肩上がりとなっています。

では、「実店輔での購買履歴を使ったバナー配信」とは、どういった仕組みなのでしょう。

たとえば、「コンビニで、ビールを半年に5回以上購入する40歳の男性」のみにビールの広告を配信し、ブランドスイッチへ繋げるといった施策が考えられます。

ターゲティングの仕組みイメージ

これはあくまでイメージですが、重要になってくるのは「最適なターゲティング」です。そのために大切なポイントを紹介します。

1. 自社商品を購入しているユーザーにも配信をする

多くのメーカーにとってブランドスイッチは命題ですが、新規顧客の獲得以上に重要なことは「CRM」です。自社商品のファンがファンであり続け、「他社商品」への流出を防ぐことは結果として売上の最大化へ繋がります。

2. 類似カテゴリまでターゲットセグメントを広げ「カテゴリスイッチ」も考慮した配信をする

「ビールを飲んでいる特定カテゴリ」にだけ配信すれば、効率よくブランドスイッチを促せる可能性が極めて高いですが、リーチ人数が担保できないといった課題があります。

この課題を解決するためにも、広告主の状況に合わせて「カテゴリ」を設計した上で配信することが重要となります。上で例えたケースを参照すると、ワインや焼酎など他のアルコール製品も加えて比較検証することで、潜在的に興味のある層に対して効率的に配信をすることが可能となるといった具合です。

3. 効果検証と結果に伴うPDCAをしっかりと考えて配信をする

ユーザーは、広告に触れ興味喚起されることで購買に至ります。すなわち、他社商品にも興味喚起される可能性があるということです。

そこで、一度ブランドスイッチしたユーザーに自社商品のファンになってもらうためには、ブランドスイッチした人をしっかりと把握し、Webの特性を活かした「DMP(Data Management Platform)の構築」をお薦めします。

DMPといっても、多くの予算と手間をかけたものである必要は無く、人(ID)単位で「買った人」と「買っていない人」を分類し、保存して次の配信に繋げる仕組みを構築することが大切です。

具体的には、「自社商品を継続購入したユーザー」や「他社商品からブランドスイッチしたユーザー」「自社商品を買ってくれなかったユーザー」といった基本設計を再配信に使います。

このように、リアルデータの活用は、Web広告の配信先をより高度にターゲティングできる可能性を含んでいます。これにより、Webマーケティングは、ブランドスイッチによる新規顧客の開拓だけでなく、ファンユーザーの継続・保持も実現するでしょう。

執筆者紹介

清野賢一

静岡県西伊豆出身
Platform ID(PID) 代表取締役社長 COO

「実購買とWebマーケティングの関係性」をキーワードに、2011年7月PIDを設立。その後3年半以上、メーカー企業とさまざまな取組みを継続的に実施し、従来のWeb指標に加えてユーザーの「実購買」までを追うことで、LTV(Life Time Value)の最大化を目指す。