岡山大学はこのほど、マラリア原虫の薬剤耐性タンパク質の働きを解明したと発表した。

同成果は同大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)の森山芳則 教授、表弘志 准教授、自然生命科学研究支援センターの樹下成信 助教らの研究グループによるもので、3月2日付け(現地時間)の「米科学アカデミー紀要」電子版に掲載された。

3大感染症の1つとされるマラリアは現在でも世界で年間2億人が感染し、60万人以上が死亡している。近年、抗マラリア薬に耐性を持つマラリア原虫が出現し、対策が困難となってきている。

マラリア原虫の抗マラリア薬に対する耐性の原因としてPfCRTタンパク質の遺伝子変異が知られているが、マラリア原虫の遺伝子が特殊であることや、膜タンパク質の生産が難しいことからタンパク質レベルでの解析ができず、PfCRTの働きについてはわかっていなかった。

今回の研究では、PfCRTの遺伝子を合成し、岡山大学が開発した膜タンパク質の生産システムに導入。PfCRTを大腸菌に大量に作らせ、精製し、その機能を測定することに成功した。

その結果、PfCRTは薬物を輸送するだけでなく、アミノ酸やポリアミンなどの栄養物質を輸送するトランスポーターであることがわかった。アミノ酸はマラリア原虫が生きていくために必須な栄養素で、抗マラリア薬はこの働きを阻害することで効果を発揮していたことが示唆された。

今回、PfCRTが運ぶ物質が特定されたことで、同タンパク質を標的とした新しい抗マラリア薬の開発につながることが期待される。

大腸菌を用いた、PfCRTの太陽発現・精製・活性測定系