日本マイクロソフトは2月24日、教育機関向けOffice 365の「Office 365 Education」が国内で220万人に利用されていると発表した。また、「セルフサインアップ」と「学認(GakuNin)」の連携を開始する。

同社によると、220万人の児童や生徒、学生、教職員が利用する統合型情報共有クラウドサービスとしては国内最大級のユーザー規模になるという。これにあわせて、同サービスの特典である「Student Advantage」を生徒らが簡単に利用できる仕組みを提供する。

Student Advantageは、包括契約(EES/OVS-ES)を行っており、教職員全員のOffice 365 ProPlusかOffice ProPlusを保有している教育機関に提供されるプログラム。追加費用なく、包括契約を行っている生徒らが最新のMicrosoftを利用可能となる。

これまでは、特典を利用する際に、教育機関のIT管理者がユーザーアカウント作成作業・手続きを行う必要があったが、今回の「セルフサインアップ」によって簡単に学生がOffice 365を利用できる。

セルフサインアップは、専用Webサイトに学生自身がアクセスし、学内で割り当てられているメールアドレスを入力するだけで、最新のOfficeを1人あたり5台のPC/Mac、5台のタブレット端末、5台のスマートフォンで利用できる。メールアドレスは、外部の人間でも把握できるが、本人確認のためのメールが該当メールアドレスに送付されるため、なりすまし利用の心配はない。

一方で、セルフサインアップにあわせて国立情報学研究所が提供する学術認証フェデレーション「学認(GakuNin)」との連携も行う。これは、4月20日より提供するポータルサイトでOfficeのダウンロードが可能となるもの。学認では、様々な学校のICTサービスを管理・運営しており、55の国公立大学など150の教育機関が参加している。このポータルサイトでは、学生が割り当てられている学籍番号などのIDをポータルサイトで入力するだけで、簡単にOfficeを利用できるようになる。

現在、大学の在籍者総数は288万人いると言われており、220万人という数字は全体の76%に相当する。高校生のユーザーも一定数含まれるため、高校生の数も含めると618万人となり、利用率は36%程度に下がるというが、それでも2位以下を大きく引き離す数字になるという。

生徒らに対する無償提供について日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター統括本部 文教本部長の中川 哲氏は「将来的に高度なスキルをもって仕事をするには、教育が重要になる」と、その狙いを説明する。

日本は少子高齢化が世界で最も進む国となっているが、人口減とあわせて高度なスキルを必要としない仕事では機械や人工知能へと置き換えが進むと見られている。これは、単純に労働人口が減ることに加えて、低賃金で人を雇うよりも、機械化やプログラムによって人材から置き換えてしまった方が企業のコストも抑えられるためだ。

こうした将来的な予測を説明しつつ、中川氏は「高度なスキルを身につけるためには、高度な教育が必要」として、日本の学生が早いうちからICTに親しみ、慣れる環境を構築するためにこのプログラムを提供すると話した。もちろん、Officeを購入できる潤沢な資金を持つ私立校などでは、そうした配慮はいらないかもしれない。ただ中川氏は、メディアでも盛んに取り上げられているトマ・ピケティ氏の著書「21世紀の資本」を引き合いに出し、「(ICT)教育が裕福な家庭でしか受けられないとなると、格差がさらに広がってしまう。だからこそ、高度な教育を安価に提供したいと考えた」とした。

「デジタルデバイスは多くの家庭にある中で、誰もが高度な教育を安価に提供できるよう、精一杯頑張った。イチ民間企業でできることには限度があるので、全てをタダにすることはできないが、こうした取り組みを今回提供できて良かった」(中川氏)