マイクロソフトは、1月29日(現地時間)に、アンドロイド用のOutlookのプレビュー版を公開しました。ですが、これは、マイクロソフトがWindows用のソースコードなどから作成したOutlookではなく、昨年12月に買収が発表されたAcompliというアプリを改良したものです。昨年12月1日の発表から約2カ月、Acompliというアプリは、Outlookという名前になって登場しました。

そういうわけで、名前はOutlookなんですが、中身は、Outlookの「様な」アプリです。このため、WindowsでOutlookをメールクライアントやスケジュール、タスク管理に使っているという人からみると、かなり「ガッカリ」感を感じるのが現在のアンドロイド用Outlookです。もっとも、これは「プレビュー版」なので、このあとアップデートされて良くなるという「可能性」はあります。本来、筆者は、評価できるもののみを記事で扱うことにしています。実際に買ったり、試したりしたけど、紹介するほどでもないというものは、基本的には記事にしません。けなすこともないかわりに扱うこともしない、というのが基本ポリシーなんですが、今回は、ちょっとルールを曲げて、アンドロイド版のOutlookを扱うことにします。もっとも、結論としては、前述のようにアンドロイド版はOutlookモドキなので、慌ててインストールする必要はありません。このあとバージョンアップしていって「良くなって」から使えばいいのです。この記事は、あまりにOutlookにガッカリして、ぼんやりして歩いていたら、道端の側溝に落ちて靴がずぶ濡れみたいなことにならないように、Outlookの現状をお知らせしておくものです。

モバイル機器向けのOutlookは、アンドロイド用でなくiOS用にも登場しています。このうちアンドロイド用だけが「プレビュー版」となっています。実際、触ってみましたが、iOS版のほうがまともです。というのも、このAcompliというアプリは、もともとiOS用に作られたものだったからです。アンドロイド版がどれだけの作業の上で登場したのかはわかりません。マイクロソフトによる買収も発表されたのが2014年の12月1日というだけで、いつから話し合いが始まって、Outlookとなるための作業が開始されたのかもわかりません。ただ、Acompliというアプリは、2014年の2月20日に公式にアナウンスされ、正式版が登場したのは、4月になってからです。もし買収前にアンドロイド版の開発がスタートしていたとしても、4月以降のスタートだったはずです。また、マイクロソフトと買収交渉が始まったのは少なくとも製品が登場して話題になってからだと考えられ、早くても昨年の5月以降と考えられます。

Acompli社のBlog。これによれば、公式にアナウンスを行ったのは昨年の2月。このあと4月にAppストアでの出荷の記事がある

iOS版のAcompliの開発には9カ月かかっているとのことですが、アンドロイド版の開発期間も、最も長くてその程度でしかありません。急遽、Outlookとして作ったということならば、かなり短い開発期間だった可能性は低くありません。現在配布されているのはホントに「プレビュー版」というのにふさわしいぐらいのバージョンなので、おそらく2~3カ月というのがいいところでしょう。

旧Acompliと呼ばれていたこのOutlookという名のアプリは、メールとカレンダーが一体になっていて、メールの「アーカイブ」、「削除」、「カレンダーに登録」という3つのアクションを指先で簡単に指定できるところに特徴があります。メッセージを右にスライドさせると「カレンダー登録」で、左に軽くスライドさせると「アーカイブ」、さらに左にスライドさせるとメッセージの「削除」になります。ここは、使い勝手がいいというか、使っていて「気持ちいい」ところです。WindowsのOutlookにも、メッセージをカレンダーにドラッグして予定を登録という「ワザ」が使え、そこに通じるところがあります。

画面左上のハンバーガーアイコンで、メインメニューが表示される。ここからメールやカレンダー、ファイル、連絡先といった機能を選択する

メールは、複数アカウントのメールをまとめて1つのInboxに表示できる。また、「クイックフィルター」機能で「未読」、「フラグ付き」、「ファイル添付」の3つの条件でメールを絞り込める

メッセージを左にスライドさせて指を離すとアーカイブ(Inboxに表示しない)状態にできる。さらに左にスライドさせると削除

右へスライドさせるとカレンダー登録になる

メッセージをカレンダー登録すると、時間指定のダイアログが表示される

OneDriveのようなストレージサービスや過去に着信したメールの添付ファイルなどを「ファイル」として扱うことができ、作成したメッセージに添付することも可能

ただ、肝心のカレンダー自体がちょっと残念な状態です。たとえば、アンドロイド版やiOS版のOutlookでは、タイムゾーンを指定した予定の入力ができません。これは、アメリカにいくフライトを予定として登録するような場合に必須ともいえる機能です。日本国内にいると、海外にいくときぐらいしかタイムゾーンをまたぐことはありませんが、米国には、6つもタイムゾーンがあり、アラスカとハワイは除くとしても、本土内に4つのタイムゾーンがあります。飛行機では、到着時間は、到着地のタイムゾーンで表記するのがルールなので、タイムゾーンを指定できない予定の入力は、自分で換算する必要があり、面倒だし、間違えてしまう可能性もあります。なので、タイムゾーンを指定できる時刻入力は、基本的な機能といってもいいでしょう。

また、予定の入力や編集時に「時刻」を指定する方法も、ちょっと混乱します。現在のアンドロイド版では、他のアプリのように、数字で時刻を指定する方法がなく、時刻の指定や修正は、カレンダーを表示させて、予定の時刻の場所をタップして入力するのです。なので、予定の編集中なのに、編集がキャンセルされて予定表示のページに戻ってしまったように見えます。iOS版は、ちゃんと時刻が表示されたドラムみたいなのを指先で回して時間を指定することができます。同様のコントロール(GUI部品)は、アンドロイドにもあるのですが、なぜか、1日表示のカレンダーをタップして時刻を修正しなければなりません。

登録した予定の編集機能。日付や時間をタップすると、1日のカレンダー表示画面に切り替わり、これをタッチして時刻や日付を修正する

そんなわけで、予定の入力は、デスクトップのOutlookから行うのが一番効率的です。あるいは、WebブラウザでOutlook.comを開いて行ってもまだ、アンドロイド版アプリのOutlookより効率的とさえ思えます。

もう1つ筆者の個人的に受け入れられない部分は、一カ月の予定表示画面がないことです。できるのは、1カ月のカレンダーを表示して日付を指定できるだけで、デスクトップ版のOutlookの一カ月表示や、同じくタブレット版のGoogleカレンダーアプリにあるような、一カ月の表示のなかに文字で予定を表示する機能がないのです。これは、筆者的には、受け入れることができません。一カ月という範囲で全体をみながら、空き時間などを探すのに1週間しか表示できないのもちょっと困ります。さらにいうと、1週間の始まりを月曜日にできないのもかなり残念なところです。

カレンダー表示は、予定を順に表示するか、1日単位で範囲表示するかの2種類しかない

一カ月のカレンダーを表示することもできるが、日付を選ぶだけしか機能がない。iOS版は、ここで予定の入っている日には、マークが日付の下に表示される

こういうのは、かなり「非論理的」で「感情的」な意見かもしれません。ですが、世の中にいろいろな形式の手帳があるように、人の好みはいろいろで、誰も、それを変えたくはないのです。

そういうわけで、アンドロイド版のOutlookについては、かなり厳しい評価になってしまいました。ただ、「モバイルファースト」を掲げ、急激にアンドロイドやiOSでのオフィス環境を整備していく、そのスピードは、会社の大きなを考えると、驚異的ではあります。ただ、Googleも座して待つわけではなく、前回紹介したInboxのようなアプリを出し、アンドロイド標準のGmailは、Gmail以外のメールアカウントにも対応しています。また、カレンダーアプリもLollipopのタイミングで更新しています。

そういうわけで、アンドロイド版OutlookがiOS版と同等になったとしても、まだ先にInboxやカレンダーアプリに追いつくという目標が待っています。

マイクロソフトも、出して終わりとは思っていないでしょう(これでいいと思っていたら大変です)。そういうわけで、今後の改良に期待したいところです。

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