SCSKは「クラウド」という言葉がまだなかった2004年 から、VMwareのテクノロジーをベースとしたハイブリッドクラウド「USiZE (ユーサイズ)」を展開しており、今やその利用顧客数は340社以上、VM(仮想マシン)数は9,000を超えている。ビジネスのクラウド化が進展し、より深いサービスが求められるようになってくる中、VMwareのテクノロジーはSCSKの今後のクラウド戦略において重要な役割を担っている。

クラウド活用が成熟する一方で課題も浮き彫りに

クラウドの活用は一時期のブームから、顧客の成熟度も向上した現在、オンプレミスとクラウドの使い分けを検討する実用期に入った。つまり、まずは共有型クラウドを検討する「クラウドファースト」の流れも継続している一方、クラウドの活用により、いかに効果を上げるか、実運用における課題も浮き彫りになってきている。

クラウドの活用は経営資源の効率化、外部環境の変化に柔軟に対応できる内部環境の構築、事業継続性の強化などが期待されており、特に大規模な導入にあたってはトップダウンで決まることが多い。しかしパブリッククラウドを導入している企業の現場では、サポート体制や障害時対応などへの不安から、SCSKなどのシステムインテグレーターにサポートを依頼することも増えているという。

SCSK株式会社 基盤インテグレーション事業本部 クラウドインテグレーション部 クラウド基盤サービス課長 白川正人氏

SCSKの基盤インテグレーション事業本部 クラウドインテグレーション部 クラウド基盤サービス課長である白川正人氏は、「そうした不安から結果的にパブリッククラウドを活用する最大のメリットであるコスト効果が得られなくなっています」と話す。そこでそうしたサポートを得つつ、コスト効率の最大化を可能にするのが同社のハイブリッドクラウド「USiZE(ユーサイズ)」である。

USiZEはリソースの利用量に応じて従量課金するインフラ基盤サービスだ。システムインテグレーターであるSCSKの強みを活かし、アセスメントを通じて顧客システムの現状を可視化した上で、システムの適性に応じて最適なモデルを提案するという。具体的には、ITリソースと運用を完全カスタマイズ型で提供する「プライベートモデル」、VMwareの仮想化技術をベースに品質とコストのバランスを最適化できる「シェアードモデル」 、パートナーのグローバルクラウドに付加価値をつけて提供する「パブリッククラウドモデル」 の3つのサービスモデルで構成される。

なかでも、主力は標準で運用監視が組み込まれているシェアードモデルだ。シェアードモデルの特長を、白川氏は「マネージドサービス型による高い品質とセルフサービス型のコストメリットのバランスを最適化できることです。VMwareの仮想化技術をベースとしているので、既存のシステムを改修することなく、そのまま移行することができるのも特長の1つです」と話す。

サービスラインナップ

実績と取り組み

2004年サービス開始以降、基幹系を中心とした稼動実績を蓄積

「クラウド」という言葉がまだ存在していなかった2004年からSCSKがVMwareのテクノロジーを活用して展開してきたUSiZE。当時は“ユーティリティコンピューティングサービス”と呼ばれていた。従量制でコンピューティングノードを提供するサービスとしては、日本で最も長い歴史を持つクラウドサービスの1つである。

SCSK株式会社 基盤インテグレーション事業本部 クラウドインテグレーション部 クラウド企画課長 菅原俊夫氏

SCSKの強みについて、同社基盤インテグレーション事業本部 クラウドインテグレーション部 クラウド企画課長の菅原俊夫氏は「オンプレミスからクラウドへの移行に対し、数多くの経験と実績があり、膨大なスキルとノウハウを蓄積していることです」と話す。その言葉の通り、現在、USiZEを利用する顧客数は340社以上、VM数は9,000を超えている。

菅原氏は「オープンソースとして公開したマルチクラウドコントローラであるPrimeCloud Controller を利用することで、インフラだけでなく、ミドルウェアやアプリケーションなどの運用監視、自動プロビジョニングもできるのが、キャリア系クラウドサービスとの差別化ポイントです」と語る。

「USiZE」の具体的な導入事例を見てみよう。カーエレクトロニクスメーカーであるパイオニアは、オンプレミスで運用していたミッションクリティカルな基幹システムであるSAPの基盤にUSiZEのシェアードモデルを採用している。基幹システムを運用する上で、プライベートクラウドのサービス品質とマルチテナントでのコストパフォーマンスをバランスよく兼ね備えている点が採用の決め手となったという。オンプレミスのSAP環境をクラウドに移行すると共に、5.5カ月という短期間でVMware vSphereベースのサービス利用型仮想化基盤にSAPを中国に導入した結果、SAPの維持運用費用を50%削減、アドオンプログラムの処理時間を大幅短縮、99.99%以上の可用性を実現した。また、基幹システムであるERPがクラウド上で運用されるようになった結果、万一、災害が発生した際も可能な限り復旧時間を早められ、事業継続性がより強化されるようになったという。インフラとアプリケーションのワンストップサポートの品質や、営業・サポート担当の顔が見える対応といった、SCSKならではのサービスに対するお客様からの評価も高い。

ERPシステムのクラウド化

導入効果

白川氏は「ERPも稼働できるVMware vSphereの高可用性、高信頼性を基盤としていることが、USiZEの強みです。逆に、基幹システムにも耐えられる仮想化技術であることがVMware vSphereを選定した最大の理由です。これにより、金融業界などシステムの安定性・セキュリティを求めるお客様のニーズにも応えることができ、多くのお客様にご満足していただいています。また製品の成熟度はもちろん、万全のサポート体制、オンプレミスからクラウドへの移行の親和性なども高く評価しています」と話す。

VMware vCloud Airでより一層の価値を提供

VMwareが2014年11月より新たに提供を開始したパブリッククラウド「VMware vCloud Air」への期待を菅原氏は、「VMwareの仮想化技術を活用しているので、USiZEとの高い親和性が期待でき、新たな選択肢が増えることで、これまで以上の価値をお客様に提供できます」と話す。

さらにUSiZEの今後の取り組みについて、白川氏は「オンプレミスをクラウドに移行する場合、インフラだけでなくアプリケーションの移行が重要です。移行作業を無停止かつ自動化できれば、移行期間を間違いなく短縮できます。そうした点においてはVMware NSXによるネットワーク仮想化の領域に大いに期待しています」と語る。