民主化により急激に旅行者が増えつつあるミャンマー最大の都市ヤンゴン。特に旅行に適した乾期(10月中旬から2月中旬)は観光客も多く、人気のホテルやレストランはすぐに予約で埋まってしまいます。中でも数日前には予約が必須なのが、ビュッフェを楽しみながらミャンマー各地の民族舞踊を鑑賞できるシアターレストラン「カラウェイパレス」。ヤンゴンには同様のレストランが他にはないことに加え、ダンスのレベルが高さでも人気を集めています。今回はこの劇場の主要ダンサーのひとり、チョウ・スーさんにお話をうかがいました。

チョウ・スーさん/ミャンマー・ヤンゴン在住/23歳/民族舞踊ダンサー

■これまでのキャリアの経緯は?

ヤンゴン出身の23歳です。初めて伝統舞踊に興味をもったのは11歳の時。ミャンマーの学校では学年末に優秀な成績の生徒を特設ステージで表彰するのですが、ふだん生徒たちが練習を積んできたパフォーマンスの披露も行います。そこで上級生たちが踊った伝統舞踊をひと目で気に入り、習いたいと母にねだったところ、たまたま知り合いに教えている人がいて実現しました。

高校在学中も踊りをずっと続け、卒業後は迷うことなく国立舞踊専門学校へ進学。在学中にカラウェイパレスの事務局に認められ、研修生として舞台に立たせてもらえることに。そのまま就職し、現在に至ります。出演するプログラムではほとんど主役をいただいており、今では後進の指導もしています。

湖に浮かぶ伝説の鳥カラウェイ。チョウ・スーさんが働くシアターレストラン「カラウェイパレス」だ

■現在のお給料は以前のお給料と比べてどうですか?

今の仕事以外はしたことがないのでわかりません。他の仕事と比べてそれほどお給料をたくさんいただいているとは思いませんが、舞台に立つのは1日3時間だけ。時々、開演前に後進の指導に出向きますが、それを考慮に入れてもとても楽をさせてもらっていると感じています。

■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?

好きな踊りを踊っているだけでお給料がいただけるのですから、心から満足しています。拘束時間が短いので自由になる時間が多いのもいいですね。何より、お客さまが熱心に拍手してくださると充実感を覚えます。

最前列で「灯明の踊り」を踊るチョウ・スーさん(カラウェイパレス提供)

■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?

嫌な点を探すのが難しいくらいですが、あえていえば、今までやったことのないようなタイプの踊りを覚えるのはなかなか大変です。新作の「灯明踊り」は両手に灯明を掲げて踊るのですが、バランスをとるのがとても難しく、コツをつかむのに時間がかかりました。ミャンマーの土着の神にささげる踊り「ポジジョー」もとても激しい振り付けなのに大勢で息をそろえる必要があり、なかなか満足の行く仕上がりになりませんでした。でも、大変な踊りほど、思ったように踊れたときの喜びも大きいですけどね。

また、新作ではないのですが、うちの劇場でとても人気の高い「シャン族の鳥の踊り」というのがあります。大きな鳥の羽をつけた男女がペアで踊るのですが、激しく動きつつ、相手役にぶつからないよう距離をとらねばなりません。毎回踊り終えるとぐったり。でも、お客さまの受けが特に良い演目なのでやりがいはありますが。

王宮の男女に扮して踊るチョウ・スーさん(カラウェイパレス提供)

ナッ神に捧げる踊り「ポジジョー」。右端がチョウ・スーさん(カラウェイパレス提供)

■ちなみに、今日のお昼ごはんは?

後輩の指導がある日はお弁当持参で昼ごろに劇場へ来ます。今日はなかったので、昼は自宅で魚とトマトを煮込んだカレーを食べました。それに加えて出勤途中に、おやつ代わりのライムサラダを買ってきました。

魚とトマトのカレー。魚はナマズの一種

■日本人のイメージは? あるいは、理解し難いところなどありますか?

日本は楽しい国というイメージがあります。キモノも着てみたいですね。シアターにはアジア圏内からのお客さまが多いのですが、私にはどのお客さまがどの国の方なのか、実はわかっていません(笑)。でも、プログラムの中には客席に降りて踊る演目もあり、「写真を一緒に撮ってほしい」とおっしゃるお客さまにお尋ねすると日本人ということが多いですね。みなさんとても丁寧で優しいので、印象は良いです。

■最近TVやラジオ、新聞などで見た・聞いた日本のニュースは何ですか?

あまりテレビやラジオなどは見ないのですが、少し前に報道された火山の爆発の話題は覚えています。山が爆発するなんて怖いなぁと思いました。

■休日の過ごし方を教えてください。

休みは月に1回だけです。少ないですが、そもそも1日の労働時間が少ないので、不満はありません。

■将来の仕事や生活の展望は?

現在、自分の踊りの練習とは別に劇場で行っている後進の指導は、仕事の一部なので収入にはなりません。そう思うとやはり身が入りません(笑)。いつか自分の教室を持ち、自分で見込んだ才能ある子どもに、もてる技術を伝えていけたらいいですね。