2014年も科学が関連したさまざまなニュースがわれわれに期待や興奮を与えてくれた。Mashableが「2014年は科学の重要性が10倍アップ(原題:10 times science ruled in 2014)」において、今年の重大科学ニュースを10つピックアップしている。今年一年を振り返る意味でも、確認しておきたい。

(1)土星の衛星「エンケラドス」での海の存在の確認

土星には60以上の衛星が発見されているが、エンケラドスは土星の周りを回る直径約500キロの第2衛星だ。白い氷に覆われているが、2005年、米航空宇宙局(NASA)の土星探索機カッシーニ(Cassini)がエンケラドスの割れ目から水蒸気と氷が出ている様子を記録していた。

カッシーニが撮影したエンケラドス 写真:NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute

これより、厚い氷の表面下に液体の海が広がっているのではないかという憶測が出され、生物の存在への期待にもつながっていた。しかし、エンケラドスは太陽から遠く離れており大気温度は摂氏マイナス270度程度、海をとりまくエコシステムを支えるには小型であることからも、海の存在については可能性に懐疑論も少なくなかったようだ。だが、土星との引力が関係した作用(潮汐力)が、海の存在を可能にしているという説がでている。

4月、米国とイタリアの共同研究チームは科学誌「サイエンス」に論文を発表、カッシーニが2010年から2年間行った研究によりエンケラドスの氷の下に液体の海が存在することを確認したと報告した。

重要な理由としては、「惑星上に液体状の水があることは、その惑星での生命の維持にとってカギを握る要素であること」が挙げられている。

(2)創造論対進化論

1859年にダーウィンが発表した「種の起源」における"進化論"が登場するまで、支持されていたのが創造論だ。創造論とは、「創造主なる神」に宇宙や生命などの起源を求めるものだ。

この創造論に対して科学者が挑戦するという位置づけで、"The Science Guy"として米国の教育番組で知られる科学者のBill Nye氏が、米国ケンタッキー州の天地創造博物館に行き、創造論者でキリスト教伝道師のKen Ham氏と2時間以上にわたる議論を交わした。テーマは「創造論は科学か?」だ。

この2人の議論は、少なくとも米国では大きな反響を呼んだようだ。Young Earth Creationismという創造論を信じるHam氏は討論中、「創造論は単に地球の起源を説明するにあたって満足できる選択肢であるだけはなく、唯一の選択肢」という考えを一貫して主張したという。対するNye氏は、過去の自然法と現在の自然法とを切り離すHam氏の考えに合意できないと反論した。

地球の起源について教えるという点から見た時、創造論が実行可能な科学モデルなのかどうか――この点について、Nye氏は「有効な教科書として聖書を利用するには、聖書が説く理論が世界のさまざまな要素を説明する証拠が必要」と主張した。

(3)Samsungがグラフェンの商業生産に向けた成果

グラフェンは、シリコンの100倍以上の電子移動性を持ち、鋼鉄の200倍とされる耐久性、そして柔軟性にも優れる電子素材だ。その特性から、フレキシブルディスプレイなどの用途に期待されている。2004年にマンチェスター大学のAndre Geim教授とKonstantin Novoselov教授が最初のサンプル作成に成功、両氏は6年後ノーベル物理学賞を受賞している。

Samsungは4月、グラフェンの単一結晶体を商用シリコンウェハーと同程度の大きさにすることに成功したことを発表した。唯一の課題とされてきた「大きさ」への解決につながるものとなる。

グラフェンは、スマートフォンなどの電子機器の利用や製造に大きな変化をもたらすと考えられている。曲がる画面をはじめ、ウェアラブルのニーズを満たすことができると期待されており、将来的にはシリコンを置き換える可能性も秘めているという。

(4)最大の恐竜「ドレッドノータス」の化石発見

推定約26メートル、重さ65トンという最大の恐竜「ドレッドノータス(Dreadnoughtus)」の化石がアルゼンチンで発見された。7700万年前に生存していたと予想されており、65トンという重量はこの地球を歩いた陸上生物としては最大だろうと言われている。ドレッドノータスの骨格が良い保存状態にあったことも、順調な発掘作業に追い風となったようだ。

研究者らは70%の骨格の復旧に成功、これは当時の生物とその後の進化を分析する重要な資料となるという。

(5)塩水を燃料とするスポーツカー型リムジン「Quant e-Sportlimousine」

3月、スイス・ジュネーブのモーターショウでNanoFLOWCELLが披露した「Quant e-Sportlimousine」。スポーツカーとリムジンを融合したスタイリッシュなデザインも目を引くが、なんと燃料に塩水を利用するのだ。

社名になっているフロー電池(Flow Cell)を動力とし、4輪の車輪それぞれに電気モーターが備わる。この電気モーターは、2種類の電解液を組み合わせることで起こる反応を利用して発電する。コンセプトカーとして発表されたが、すでに欧州では公道走行が認められている。

「Quant e-Sportlimousine」は、持続性のある将来に向け、自動車業界における重要なブレークスルーとして期待されるうえ、われわれを取り巻くグローバルエコシステムに悪い影響を与えている化石燃料の代替となる可能性も秘めているという。NanoFLOWCELLによると、同社の技術は飛行機、鉄道などでも応用できるとのこと。